2017 Fiscal Year Research-status Report
メカノエレクトロケミストリーに基づく弾性波によるイオン輸送促進とデバイス開発
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16K13657
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井口 史匡 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00361113)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メカノエレクトロケミストリー / 弾性波 / ひずみ効果 / 共振 / 固体電解質 |
Outline of Annual Research Achievements |
超音波減衰率が低い石英ガラス棒の端部に対してイットリア安定化ジルコニアをパルスレーザ堆積法で厚さ数百nmで製膜し,弾性波を炉外から導入可能な固体電解質セルを得た。他端部に圧電アクチュエータを設置し弾性波を導入し安定化ジルコニアのひずみを計測した結果,非共振状態で10MPa,共振状態で40MPaに相当するひずみが導入されていることが明らかになった。また圧電アクチュエータが生み出す力と導入されるひずみの量には正の相関があり,圧電アクチュエータの交換により,さらに大きなひずみを導入できることも併せて確認された。 作製した固体電解質セルの薄膜部を炉内に設置し,500℃において薄膜に弾性波を導入し,その導電率に対する影響を直流四端子法により評価したところ,共振状態において1割程度の導電率の向上が観察された。この導電率の向上は一定の再現性があり,非共振用では観察されないため,弾性波を導入した影響であると考えられる。 単結晶のイットリア安定化ジルコニアに機械試験機を用い静的なひずみを加えることにより数十MPaの応力印可により1割程度の導電率変化が生じ,引張に対しては増加,圧縮に対しては減少することが報告されており,応力の程度から考えると弾性波において観察された変化は,静的なひずみによる変化と同じ起源をもつと考えられる。しかし,弾性波は進行に伴い,体積的な粗密,すなわち局所的なひっぱりひずみと圧縮ひずみを繰り返す。その影響については,今後さらに考慮する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時より本研究においては,弾性波の効果が観察可能となる以上の強度で弾性波を導入可能であるかと,それを電磁ノイズなどに妨げられることなく評価可能となるかが要点であった。今年度において,この二つが達成できた。 しかし,より大きな弾性波を導入可能な圧電アクチュエータの適用はまだ実施しておらず,ひずみが生み出す化学ポテンシャル差についても評価は行えていない。 その点を考慮して研究の進歩状況は”おおむね順調に進展している”とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が最終年度であるため,今年度得られた成果のより詳細な解析,特により大きな弾性波を導入し,機械試験機などで加えられている以上の大きさのひずみを導入した際の効果について評価を行う予定である。 また,イットリア安定化ジルコニアは薄膜で評価するには抵抗が高いため,同じ蛍石型構造を持ち,より抵抗が低い酸素イオン導電体である希土類添加セリアを用いる。さらに酸素イオン伝導体だけではなく,酸素電子混合導電体であるコバルト酸ランタンなどを用いた評価も併せて行うことで弾性波が与える影響について様々な角度から研究を進めることとする。
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Research Products
(6 results)