2018 Fiscal Year Research-status Report
メカノエレクトロケミストリーに基づく弾性波によるイオン輸送促進とデバイス開発
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16K13657
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井口 史匡 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00361113)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ひずみ効果 / 定在波 / YSZ |
Outline of Annual Research Achievements |
弾性波により導入される周期変動するひずみが酸化物イオン導電体であるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の酸化物イオン導電率を向上させることを実験的に明らかにし,さらに応力,ひずみに対する導電率変化の依存性を求めた。また,定在波モデルを用いることで,導電率の変化の起源が,圧縮と引張ひずみに対して導電率変化量が異なるためであることを明らかにした。 石英棒にピエゾアクチュエータを用いて弾性波を導入し,棒内に定在波を生じさせた。定在波の節付近にYSZ薄膜を製膜することで,YSZ薄膜に定在波の周期と同じ周期で,その大きさをピエゾの駆動電圧により制御可能なひずみを加えた。直流電圧を印可し,直流電流を計測しながら弾性波を印可しYSZ薄膜にひずみを加えたところ,印可直後に電流が増加し,停止直後に電流が元の値に戻った。また,ピエゾの駆動電圧を増加させ,定在波により生じるひずみを増加させ,直流電流の増加率を計測したところ,応力に対してほぼ線形的に増加率が増え,その値はおよそ1%/MPaであった。これらより弾性波による電流の増加は,局所加熱,キャリア濃度の変化のように変化に時間を要するひずみの副次的効果ではなく,ひずみ自体によるものだと確認できた。 石英棒内のひずみ分布を計測し,定在波が自由端自由端の振動モードに起因するものであることを確かめ,それに基づき定在波モデルを構築した。モデルにはYSZ単結晶に機械的応力を負荷した際の導電率変化が示した異方性を導入した。定在波を導入すると,YSZ薄膜の導電率が定在波の周期に従い周期的に変動し,異方性に応じ引張側で導電率が大きく向上する。直流電圧印可かにおいてこの導電率の周期変動が直流電流に同様の周期変動をもたらし,積分和としての直流電流を向上させる。既報の異方性を考慮した,導電率の増加率は観察結果とおよそ一致するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度において弾性波が導電率を向上させるメカニズムが不明であったが,定在波モデルと既報の応力依存性の異方性を導入することで,導電率向上のメカニズムを明らかにすることができた。また,応力,ひずみと直流電流の増加率を直接計測することができた。YSZにおいて機械試験機や格子ミスマッチを用いた静的なひずみを印可することによる導電率の変化は報告されているが,弾性波により生み出される動的な影響を観察した例は報告されておらず,本研究の結果は本分野において新たな知見を加えるものである。さらにこの結果は,固体酸化物型燃料電池や電解器の性能を弾性波を用いることで動的に制御できる可能性を示しており,当該分野において重要な研究結果であると言える。 今年度の成果を基に,学会発表2件,論文1報を投稿しさらに国際学会発表2件を予定している,その点を考慮すると今年度の進歩状況はおおむね順調に進展していると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては,得られた実験結果の解析を進め,学会発表や論文投稿につなげていく予定である。
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Causes of Carryover |
本来であれば,今年度が最終年度であった。しかし,電磁ノイズの低減等に時間を要し論文投稿まで終了しなかった。そこで,研究期間を延長し,次年度に論文投稿や学会発表を行うこととした。
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Research Products
(4 results)