2016 Fiscal Year Research-status Report
テラヘルツ波フォトンによる高温超伝導体の電子対破壊現象と77K動作検出器への応用
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16K13659
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中島 健介 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (70198084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 博信 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (50400411)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高温超伝導体 / テラヘルツ / 検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
超伝導転移温度に近い比較的高い温度に置かれたBi-2212固有ジョセフソン接合のテラヘルツ波応答はテラヘルツフォトンによる電子対破壊に由来する可能性がある。本研究では,この応答メカニズムの解明をとおしてBi-2212のサブエネルギーギャップ構造につながる知見を得るとともに,極めて短いと予想される対破壊キャリアの再結合時間から期待される高速応答性とテラヘルツ波に対する高感度応答性を活用して液体窒素冷却で動作可能なテラヘルツ波検出用ホットエレクトロンボロメーターへ応用することを目的としている。平成28年度は,従来のCapped-LPE法によるBi-2212膜ならびにMgO基板段差型Bi-2212固有ジョセフソン接合に加えてフォノン冷却型ボロメーターに不可欠なBi-2212超薄膜を作製した。高純度化学製有機金属溶液を用いた有機金属分解法(MOD法)によりSrTiO3(STO)基板上に成膜した膜厚10~15nmのBi-2212超薄膜は,可視光に対してほぼ透明でありながら約85Kで超伝導転移することを確認した。平成29年度では膜の均質性を向上させたうえでBi-2212超薄膜ボロメーターの完成を目指す。また,MOD-Bi2212超薄膜の基板に用いたSTOは低温で強い強誘電性を示し,マイクロ波領域では損失が大きいことが知られている。一方,分散周波数以上となるため低損失となることが期待されるテラヘルツ波領域における詳しい特性については報告が見当たらない。STOは高品質なBi-2212薄膜の作製に適した基板材料であることから,本研究の目的を達成する過程においてSTOのテラヘルツ波特性を明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液体窒素冷却動作テラヘルツ波ボロメーターの実現に不可欠な77K以上で超伝導転移するBi-2212超薄膜の作製は完了しており29年度内に目的とする検出器の試作とテラヘルツ波検出の実現,特性評価が達成できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
フォノン冷却型Bi-2212薄膜ボロメーターの基板として選定したSTOのフォノン伝搬特性に関しては過去の報告から十分な情報が得られているもののテラヘルツ波の損失については明らかでない。本研究の次のステップとして検討しているBi-2212薄膜のテラヘルツメタマテリアルにおいてもSTOは重要な基板材料であることから,本研究の目的とするボロメータ―の実現の過程において,その特性に大きな影響を及ぼすテラヘルツ波損失特性をできる限り明らかにする。
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Research Products
(3 results)