2016 Fiscal Year Research-status Report
量子効果デバイスに向けた大面積数ナノメートル厚の有機単結晶性絶縁膜製造技術の開発
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16K13661
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 達生 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00242016)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒井 俊人 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (40750980)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機トランジスタ / トンネル効果 / 自己組織化 / 超薄膜 / 二分子膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アルキル鎖とパイ電子骨格が連結した非対称な有機半導体分子が、二分子膜構造にもとづくきわめて高均質な極薄単結晶層を与えるという研究成果を手がかりとして、半導体層ではない極薄絶縁層をデバイス機能として活用することを目的とする。本年度は、超高品質な極薄層状単結晶が得られるPh-BTBT-C10を主たる対象として、絶縁性のアルキル鎖層の形成に伴う伝導度の異方性の効果を実験的に詳細に検討した。これにより、有機半導体単結晶におけるトンネル伝導機構の発現を初めて実証することに成功した。まず、層数制御したPh-BTBT-C10単結晶薄膜を作製し、面外X線回折測定により明瞭なラウエフリンジを観測し、これをもとに積層方向の高い秩序性を確認することに成功した。次に上記単結晶薄膜の層間伝導挙動を、単結晶薄膜をチャネル層とする電界効果型トランジスタ構造を用いて詳しく調べた。特に持つ単結晶薄膜トランジスタの二端子移動度と四端子移動度の積層数依存性を詳細に測定した。その結果、積層数の増加とともに、ドレイン/ソース電極からチャネル層へのアクセス抵抗が著しく増大することを見出し、さらに各ゲート電圧のもとでの電流-電圧特性の測定から、低電圧側に見られる顕著な非線形挙動がアクセス抵抗増大の原因になっていることを明らかにした。特にその非線形挙動は、Ph-BTBT-C10のアルキル鎖が高品質な超薄絶縁層として機能し、これをまたぐトンネル伝導機構によるとのシミュレーション結果と定性的に一致することが確認された。さらに、その非線形な挙動が低温でも大きく変化しないことから、ドレイン電圧が低い領域で、キャリアはアルキル鎖層をまたぐトンネル的に輸送されており、これが非線形電流-電圧特性の原因になっていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、超高品質な極薄層状単結晶が得られるPh-BTBT-C10を対象とした詳細な輸送特性の測定によって、アルキル鎖絶縁層をまたぐトンネル伝導機構の発現を初めて実証することに成功した。研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた成果にもとづき、来年度は、最適な分子設計、分子動力学計算を用いた凝集構造予測、分子材料の合成、薄膜化プロセス、及び薄膜評価をもとに、極薄絶縁層をデバイス機能として活用する研究を強力に推進する計画である。
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Research Products
(16 results)