2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13663
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹中 康司 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60283454)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 新機能材料 / 負熱膨張 / 熱膨張制御 / 4f電子 |
Outline of Annual Research Achievements |
一硫化サマリウムSmSの4f電子数と体積の相関学理を解明し、新しい巨大負熱膨張材料を創製することを目的とする。初年度の平成28年度では、従来法ならびに低温合成法により合成されたSm1-xYxSの熱膨張評価と負熱膨張特性の向上に取り組んだ。 従来法による合成については、物質・材料研究機構の高周波誘導炉とタングステンルツボを用いて合成を行い、熱膨張特性の組成依存性を明らかにした。これにより、X線回折による格子定数から見積もった熱膨張ではなく、バルク試料による直接的な負熱膨張評価を行い、3.5%を超える巨大な負熱膨張が発現することをはじめて検証した。 低温合成法については、固相反応法による粉末並びに焼結体試料の合成に、室温におけるメカニカル・アロイングの手法を加味することで、SmとYの固溶がより進み、負熱膨張の特性が向上することを明らかにした。負熱膨張の開始温度が最高で380 Kと、過去ならびに上記の単結晶に比べ100 K近く高いこと明らかになった。2000℃を超える従来法の合成温度に比べて800℃程度以上低い合成温度であることを考えると、硫黄含有量が単結晶試料より多い可能性がある。硫黄含有量が負熱膨張特性に大きな影響を与得ている可能性を示唆する結果である。 また、得られた試料を、銅などの金属やエポキシなどの樹脂と複合化する研究に着手した。従来法単結晶粉末と低温合成多結晶焼結体粉末では、複合化したときの熱膨張抑制能力に違いがあることが示唆された。また、来年度に向けて低温合成法で得た焼結体について電気抵抗率の予備的測定も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来法による単結晶育成に成功し、巨大な負熱膨張の直接的検証に成功した。また、メカニカル・アロイングが、低温合成による粉末試料の特性向上に有効であることを突き止めた。計画した目標はほぼ達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究で課題として出てきた、試料の化学組成(Sm,Y,Sの比率)を定量的に評価し、熱膨張など物理量の希土類元素比依存性や硫黄含有量依存性を明らかにする。その成果をもとに、熱膨張特性の最適化を図る。 メカニカルアロイングを特色とする低温合成法では、依然として焼結が十分でなく、平成28年度に着手した電気抵抗率の予備的測定では、サンプル間のばらつきが大きく、再現性の点で課題があった。まずは、信頼できる輸送特性を測定できるに十分な強度の焼結体を得るべく、作製条件の最適化を行う。通常のコールドプレスの他、放電プラズマ焼結法も活用する。 組成の制御された試料を用いて、熱膨張特性に加え、電気抵抗率や熱伝導度などの輸送特性の評価を行う。また、電場誘起体積変化を、非線形電気伝導の計測から検証する。また、組成の制御された試料を金属や樹脂と複合化し、複合材料の機能向上を図る。 光電子分光法などの分光実験により4fバンドを含むフェルミ準位付近の電子構造を明らかにするとともに、徹底的な組成最適化と熱膨張などのマクロ物性評価を行い、組成⇔電子構造⇔体積機能、三者の相関を解明し、「望みの機能」を発現させる物質制御の工学的手法を確立する。
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Research Products
(7 results)