2016 Fiscal Year Research-status Report
交流磁場印加時に磁性流体が発する励磁音響効果に関する研究
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16K13666
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 貴 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70273589)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 励磁音響効果 / 交流磁場 / 磁性ナノ粒子 / 磁性流体 / 発音遅延時間 / 音圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
交流磁場を印加することで,磁性流体から磁場の2倍の周波数を持つ音波(励磁音響波)が誘起されるという現象“励磁音響効果”が磁性ナノ粒子の示す新たな現象として注目されている.励磁音響波は粒子の磁気相互作用により発生すると考えられる.本研究では磁気相互作用の強さは音圧という形で測定結果に現れると仮定し,励磁音響波の音圧の磁場条件による変化を測定して関係性を評価することで発音機構を考察した.結果として,磁場強度を変化させると音圧は磁場強度の2乗に比例して増加し,磁場周波数を変化させると音圧は特定の周波数で最大となった.また断続的な磁場を印加すると,磁場印加中の励磁音響波は磁場周波数の2倍の周波数をもつのに対し,消磁直後の励磁音響波は磁場周波数によらず一定の周波数をもつことが分かった.この消磁直後の音波がもつ周波数は,音圧が最大となった周波数と一致した.これらの結果から粒子間に働く磁気力の簡易的なモデルを立て,励磁音響波の音圧が磁場の2乗に比例し,周波数が交流磁場の2倍になる理由を説明することができた. 発音遅延時間ついては,先行研究では実験値の近似直線の外挿値として間接的にしか示されていなかった発音遅延時間を,実験系の工夫により直接測定することに成功し,発音遅延時間の存在を実証した.発音遅延時間は磁場周波数200~600 Hzで約0.2 msとなり,有意な周波数依存性は見られなかった.この時間は磁性ナノ粒子の磁気モーメントの緩和時間の理論計算値と良い一致を示し,発音遅延時間を緩和時間で説明することができた. 本研究の結果により,これまで不明であった励磁音響効果の発音機構と発音遅延時間が生じる原因を説明することができ,学術・応用の両面にとって重要な基礎的知見を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁性ナノ粒子分散溶液(磁性流体)に交流磁場を印加したときに生じる励磁音響の発音機構の物理的原理についての考察が進み,一定の成果が得られたため.
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Strategy for Future Research Activity |
磁性流体の粘度,濃度,溶液中分散径(凝集径)をパラメータとしてさらなる考察を進め,発音メカニズムをより深く理解し,高分子内での磁性粒子の存在位置の特定の精度を上げていく.また,励磁周波数を高周波化することで,励磁音響波にどのような影響が出現するのかも研究のターゲットとし,交流磁場中での磁性粒子同士の相互作用と磁場による粒子の並進力の分離検出の可能性を検討する.
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Causes of Carryover |
磁場発生装置を高周波化する改良を行う予定であったが、励磁音響波の発生メカニズムが解明できそうであったため、これまで得られていたデータとの整合性を考え、装置改良を次年度に先送りした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度に磁場発生装置の高周波化のための改良を行い、そのための経費とする。
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