2016 Fiscal Year Research-status Report
ポストグラフェンを目指した新規二次元Al-C物質AlCeneの実験的・理論的研究
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16K13674
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
乗松 航 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (30409669)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 新規二次元物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、新規二次元物質として、炭化アルミニウム六員環構造物質の成長に挑戦し、期待される物性を実験と理論計算により明らかにすることを目標としている。本研究ではこの二次元炭化アルミニウムを、アルセン(AlCene)と名付けている。複数の手法を用いてアルセンの結晶成長を目指した。また、平行して第一原理計算によりそのバンド構造を調べ、作製される二次元膜との対応を調べた。 これまでの成果として、パルスレーザー堆積法によって、1200℃に加熱したSiC基板上に高品質な炭化アルミニウム薄膜を形成できること、第一原理計算によりアルセンが約2.18eVの間接ギャップを持つ半導体であることがわかった。また、炭化アルミニウム薄膜は、SiCに対して特定の方位関係を持ちエピタキシャル成長することがわかった。炭化アルミニウム薄膜とSiCの界面における原子配列について、現在、高分解能透過型電子顕微鏡観察により調べている最中である。平行して、安定な界面構造を第一原理計算により求めた。現段階で得られている高品質な炭化アルミニウムの膜厚は約30nmである。一方で、炭化アルミニウム薄膜は大気中では酸化しやすいこともわかった。そこで今後は、薄膜の膜厚を二次元性が現れる厚さまで薄くしていくと共に、その取り扱いについて十分注意する必要がある。二次元膜の作製と同時に、そのより詳細な結晶構造を調べ、電子状態と物性についても明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炭化アルミニウム薄膜の結晶成長に関しては、真空炉を用いた物理気相堆積法と、パルスレーザー堆積(PLD)法の2種類の手法で取り組んだ。実際、PLD法により、均一性の高い炭化アルミニウム薄膜が得られることがわかった。その際、基板温度500℃ではアモルファスの炭化アルミニウムが得られ、1000℃では結晶性炭化アルミニウムが得られるものの、表面にアルミニウムの微粒子が形成され、1200℃で結晶性の高い炭化アルミニウム薄膜が得られることがわかった。また、炭化アルミニウムとSiC基板の方位関係は、SiC(0001) // Al4C3(0001), SiC[1120] // Al4C3[1120]であることがわかった。これは、膜厚が30nm程度の薄膜であり、今後はこれを薄くしていくことで、二次元膜アルセンが得られることを目指していく。 平行して行った第一原理計算の結果としては、はじめにバルク炭化アルミニウム結晶におけるAl-C六員環構造(アルセン)のみを取り出して計算を行った。このAl-C六員環構造単位は、アルミニウムと炭素が完全な同一平面上にはなく、わずかにバックルしている。エネルギーバンド計算の結果、バンドギャップが約2.18eVの間接ギャップ半導体であることがわかった。実際にSiC基板上に形成される構造がこれと全く同一であるとは限らず、同じであったとしてもSiCとの化学結合状態によって電子状態が変わる可能性がある。実際、いくつかの可能性を考えてその界面構造の構造最適化を行い、生じうる構造について検討した。これについては、現在進行中の炭化アルミニウム/SiC界面構造解析の結果と合わせて明らかにしていきたい。 以上のことから研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、新規二次元物質アルセンの成長を目指す。まずは、これまでに得られた試料を用いて、炭化アルミニウム/SiC基板界面構造を明らかにし、アルセンの安定な構造について調べる。二次元膜の作製は、原則として前年度と同様の手法で進めていく。ただし、炭化アルミニウム薄膜は大気に触れると酸化しやすいため、測定間の取り扱いに気をつける必要があることがわかった。高品質な炭化アルミニウム薄膜を作製し、PLDにおけるレーザー出力や蒸着時間を制御することで、薄膜を薄くしていき、二次元膜の形成を目指す。その後できるだけ大気に暴露しないようにして、そのHall効果測定を行い、電気伝導特性について明らかにする。また、同様にして試料を輸送し、角度分解光電子分光測定を行ってそのエネルギーバンド構造を実験的に調べる。同時に、第一原理計算によってSiC上炭化アルミニウムの安定な構造を調べ、そのバンド構造について調べていく。
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Research Products
(2 results)