2016 Fiscal Year Research-status Report
針状試料を用いる必要のない新しい3次元アトムプローブの原理検証
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16K13685
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 康仁 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00225666)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 単孔静電レンズ / 電極間隔 / 倍率 / 絶縁体 / 精密制御装置 / ピエゾ素子 |
Outline of Annual Research Achievements |
二枚の平面電極の片側に穴をあけた単孔静電レンズにおいて、電極間隔を極端に小さくすることで大きな拡大率が得られることを実際に荷電粒子軌道の計算機シミュレーションにより確認した。特に、穴径を一定にしたときの倍率の電極間隔依存性を調べた。単孔レンズの穴径よりも広い電極間隔では解析解に近い倍率となり、解析表現と同様に距離に反比例した。電極間隔が単孔の半径よりも小さくなると倍率は解析表現よりも低い値となり、電極間隔が極めて近接すると一定の倍率となることが明らかとなった。また、平面電極から放出される荷電粒子のおんどなどによる横方向速度の効果についても検証した。単孔電極側に絶縁膜を形成した場合の特性についても計算を開始している。絶縁膜の膜厚を変化させて倍率や電界強度の計算を行った結果、膜厚の小さい場合に興味深い現象が見られたため、現在その原因を追究している。 実際に絶縁体膜の形成とパターニングを行うための準備として、フォトリソグラフィーに必要な薬品等を購入し、パターニングの準備を行った。 大きな拡大率が得られることを実験的に示すために、ピエゾ素子を用いた電極の位置及び間隔の精密制御装置の改良を行った。予めピエゾ素子を用いた2次元の位置制御方法における問題点などを予備実験により抽出し、それを踏まえて制御部分のユニットを製作した。この改造により電極の精密な位置制御が可能であることを検証した。現在より直線性を高めるための調整を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々が提案している単孔レンズを短焦点化することで大きな倍率で平面電極上の位置の違いを拡大できることが計算機シミュレーションによっても確認することができた。この点は最も大きな成果である。絶縁体を単孔電極側に形成した場合の計算についても問題なく実施することができた。絶縁体を電極に形成したときの電界分布の変化について、当初予想をしていなかった興味深い知見がシミュレーションで得られたため、現在その理解に取り組んでいる。 電極のパターニングの準備も整えた。 電極の位置および間隔の精密制御を行う装置の改良も順調に進み、予定の性能が出せる見込みが立っている。これらの2点は本年度の研究遂行上、最も重要な点であるので、それが順調に進んでいるということは、全体としておおむね順調に進展しているといってよい。
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Strategy for Future Research Activity |
単孔電極側に形成した絶縁膜の予期せぬ効果について検討を進め、当初期待した絶縁膜の効果と背反しないようであれば、高い誘電率を持つ絶縁体を単孔電極側に形成した場合の荷電粒子の軌道計算をさらに進め、本提案の効果を検証する。 電極の位置及び間隔を精密に制御する装置の実際の位置制御の効果を検証する。平面電極からの荷電粒子放出に取り組む前に、比較的荷電粒子を放出しやすい針状の試料を用いて電子ないしはイオンを生成し、対抗電極の位置の変化によりこれらの荷電粒子放出がどのように変化するかを見極める。 位置制御の装置の効果が出せることを確認したうえで、実際に絶縁体を形成した単孔電極を形成し、絶縁体の効果を検証する。
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Causes of Carryover |
絶縁膜形成が当初予定よりも数が少なくなったことがあり、洗浄や材料、部品などの費用が当初予定より若干少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、薄膜作製を当初予定数まで実施するため、それに必要な材料費等の購入に充てる。
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Research Products
(1 results)