2016 Fiscal Year Research-status Report
走査型熱雑音顕微鏡による表面下構造可視化のメカニズム解明および応用可能性探索
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16K13686
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 圭 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40335211)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / カンチレバー / 超音波 / 表面下構造可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバー探針を試料に接触させ、カンチレバーの熱振動ノイズスペクトルを各点において測定する走査型熱振動顕微鏡(Scanning Thermal Noise Microscopy: STNM)を用いて、表面下構造可視化に関する研究を行った。ポリイミド基板上に散布した金微粒子、シリカ粒子、さらには金ナノロッドにフォトポリマーをスピンコートしたサンドイッチ構造試料を作製した。これらの試料を対象に、原子間力音響顕微鏡(AFAM)法ならびにSTNM法により表面下構造(金微粒子等)を可視化する実験を行なった。また、STNM法における計測感度の向上と計測時間の短縮を進めるため、カンチレバーの高次接触共振モードを用いたSTNMに関する実験を行なった。また、接触圧を変えてSTNM観察を行い、接触圧がSTNM像コントラスト(とくに接触共振周波数)に与える影響を評価するとともに、Hertzモデルとの整合を検討した。また、STNMにおいて各点で得られた熱振動スペクトルを理論式にフィッティングすることで探針直下の領域の接触粘弾性を算出したところ、試料のヤング率、フォトポリマー膜の膜厚等をパラメータとする一次元モデルによって計算される有効弾性とよい一致を示すことが分かった。また、ポリイミド基板にポリスチレン粒子を塗布して2次元結晶を作製し、これをマスクとして金を蒸着し、最後にアセトンでリフトオフする、コロイダルリソグラフィー法を用いて、数十ナノメートルから数マイクロメートルのサイズの表面下構造が作製できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバー探針を試料に接触させ、カンチレバーの熱振動ノイズスペクトルを各点において測定する走査型熱振動顕微鏡(Scanning Thermal Noise Microscopy: STNM)を用いて、表面下構造可視化に関する実験を行った。ポリイミド基板上に金微粒子および金ナノロッドを散布し、さらにフォトポリマーをスピンコートし、サンドイッチ構造試料を作製した。これらの試料について原子間力音響顕微鏡(AFAM)法ならびにSTNM法により観察したところ、表面下構造(金微粒子)の可視化に成功した。また、STNMにおいて各点で得られた熱振動スペクトルを理論式にフィッティングすることで探針直下の領域の接触粘弾性を算出したところ、試料のヤング率、フォトポリマー膜の膜厚等をパラメータとする一次元モデルによって計算される有効弾性とよい一致を示すことが分かった。また、コロイダルリソグラフィーを用いて、数十ナノメートルから数マイクロメートルのサイズの表面下構造の作製を試みた。ポリイミド基板にポリスチレン粒子を塗布して2次元結晶を作製し、これをマスクとして金を蒸着し、最後にアセトンでリフトオフすることで微細パターンの金薄膜を作製できることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロイダルリソグラフィーを用いて数十ナノメートルから数マイクロメートルのサイズの表面下構造を作製し、これまで用いてきたAFAMおよびSTNMによる計測に加え、走査型ヘテロダインフォース顕微鏡(Scanning Heterodyne Force Microscopy: HFM)や3次元フォースマッピング法による表面下構造の可視化も試みる。HFMでは、試料および探針をカンチレバーの接触共振周波数以上の異なる周波数で励振し、それらのビート周波数を接触共振周波数に調整しておき、カンチレバーの振動振幅位相を検出する手法であり、AFAMよりもS/Nが高いことで知られている。探針のこれらの結果を比較検討し、それぞれの手法による表面下構造可視化メカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
表面下構造作製プロセス(コロイダルリソグラフィー)で使用するコロイド粒子の粒径の選定に関し、あらかじめ数種類を購入し、STNMやAFAMによる表面下構造の可視化実験の結果を見てから、さらに数種類を追加購入する予定にしていたが、実験結果の解析に時間を要したため、コロイド粒子の追加購入は来年度以降に行うことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
コロイド粒子を購入する予定である。
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