2016 Fiscal Year Research-status Report
電気化学ポテンシャルを利用した原子単位でのドーパント数制御技術の開発
Project/Area Number |
16K13689
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
長谷川 剛 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50354345)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドーパント / 電気化学ポテンシャル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、原子単位でのドーパント数制御技術の確立を目指して、電気化学ポテンシャルを利用したナノ構造体からの不純物原子の取り出し・注入に関する研究を行っている。平成28年度は、モデル材料として硫化銀(Ag2+δS)を用いて、本提案の原理実証ならびに実験手法の確立に関する実験的研究を行った。具体的には、走査型トンネル顕微鏡を用いた銀イオンの取り出し実験を行い、電圧と析出原子数の関係を詳細に調べた。その結果、電圧をパラメーターとして、原子層単位での不純物原子の取り出しと再注入が可能であることを明らかにした。電気化学ポテンシャルは内包する不純物原子数の対数関数として表現できるが、得られた実験結果はその特徴を明確に示していた。このことから、本研究で採用した手法が正しく機能していることも確認できた。同様の実験を金属酸化物に対しても行い、金属酸化物からの不純物原子の析出と固溶が可能であることも明らかにした。金属酸化物は電子デバイスを始めとする製品分野で幅広く用いられており、この汎用的な材料を用いてでの実験成功は、大きな成果である。さらに平成28年度は、不純物原子数に依存した抵抗変化を検出するための手法の開発にも着手した。具体的には、原子間力顕微鏡を用いて金属ナノアイランドの移動制御を行い、ドーパント数制御を行うべきナノ構造体に電気的に接続する方法である。これらの成果を基に、平成29年度も、最終目標を達成すべく研究を進めて行く予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に実施を予定していた研究項目において、ほぼ予定通りの進捗が得られた。加えて、平成29年度に予定していた金属酸化物を用いた実験も実施し、一定の成果が得られた。一方、原子層単位での析出制御には成功したが、究極の(挑戦的な)目標である原子単位での析出制御にはモデル材料である硫化銀を用いてでも成功には至らなかった。しかしながら、理論的解析によってその原因(物理的起源)を明らかにした(論文投稿準備中)。この結果、原子単位での析出を実現するための指針も得られた。これらのことから、全体としては概ね順調に推移していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の変更が必要となる案件はなく、採択時の研究計画に沿って、引き続き、研究を行っていく。
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