2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13699
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北野 正雄 京都大学, 工学研究科, 教授 (70115830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 俊博 京都大学, 工学研究科, 助教 (30362461)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メタマテリアル / 自己補対構造 / サーマルイメージング / テラヘルツ波 / マイクロ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,自己補対性という特性をもつ平面構造(メタ表面)をマイクロ波あるいはテラへルツの吸収体として利用することで,電磁波のイメージングを実現することを目的としている.特に,チェッカーボード型の金属平面構造の角の部分に抵抗膜を配置した構造を研究の対象としている.平成28年度は,計算機シミュレーションによる現象の解析とメタ表面の設計に重きをおいて研究を進めた.電磁界計算によって,基板がある場合でも抵抗膜の抵抗率を適切に設定することで,自己補対性特有の周波数無依存吸収特性と吸収率の最適化をほぼ実現できることが分かった.次に,サーマルイメージングへの応用として重要な抵抗膜での温度上昇を熱・電磁界の混成計算で解析した.想定通り,抵抗膜の大きさが小さくなるほど温度が上昇する結果が得られ,抵抗膜の周辺の長さに反比例して温度が上昇することが分かった.また,一様抵抗膜に比べてチェッカーボード型メタ表面の抵抗膜での温度上昇は大きくなることが分かった.また,入射電磁波の偏光方向によって温度上昇する抵抗膜の位置が変化することも分かり,偏光に関する情報も熱分布から得られることが分かった.そして,マイクロ波領域にて動作するメタ表面の設計を行い,試料の作成を行った.基板として石英ガラス基板を用い,金属構造はアルミニウム,抵抗膜はチタンを用いることにした.メタ表面の作成の前にチタンの膜厚と面抵抗率の関係を実験で調査し,最適な抵抗膜厚を算出した.その結果に基づきチェッカーボード型自己補対メタ表面を作製した.そして,矩形導波管から15GHzから20GHz程度のマイクロ波をメタ表面に入射したときの温度分布をサーモグラフィーで観察した.実験の結果,作製したメタ表面において一様な抵抗膜の場合に比べて有意な温度上昇を観測することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り平成28年度は,チェッカーボード型自己補対メタ表面に電磁波が入射したときに発生する熱による温度上昇の計算機シミュレーション解析を中心に研究を進めた.特に,電磁界と熱の混成解析は新たに取り組む内容であり,計算手法の開発自体も大きな課題の一つであった.解析結果からは,当初予想していたように,発熱源となる抵抗膜の面積を小さくするほど温度上昇が増すことや,偏光によって温度上昇の分布が変化すること,そして周波数無依存に温度上昇が起ることが明らかになった.それに加えて,抵抗膜の面積が小さくなると,抵抗膜の周辺の長さに反比例して温度が上昇することや,抵抗膜から基板への熱の拡散が主要な温度低下の要因になることが計算によって分かった.以上のように,当初計画していたチェッカーボード型メタ表面の電磁波入射による発熱の計算機シミュレーションはほぼ予定通り完了したといえる. 以上に加えて,マイクロ波領域で動作するチェッカーボード型メタ表面の設計と試料の作成及び特性評価も行った.まずは,石英ガラス基板上に目的のメタ表面を作製することにした.それに先駆け,必要な抵抗膜の膜厚の最適化を行った.その結果に基づき,計算機シミュレーションにより設計したメタ表面を作製し,マイクロ波領域での測定を行った.その結果,メタ表面の抵抗部の温度上昇が一様な抵抗膜における温度上昇より大きくなることが明らかになり,本手法の有用性を示すことができた.実験はまだ予備的なものであり,さらなる解析が必要になるが当初の計画よりは進んだ部分といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況の部分で述べたように,計算機シミュレーションによるチェッカーボード型自己補対メタ表面の解析手法の開発はほぼ完了しており,今後メタ表面の基板や構造を変えても問題なく同手法を利用することができる.解析と予備実験で明らかになったように,基板への熱の拡散を抑えることが最重要課題であり,より熱伝導率の低い基板を用いることが今後必要になる.現在,マイクロ波やテラヘルツの透過率が大きく熱伝導率の低いポリイミド薄膜上に同メタ表面を作製することを検討している.また,更なる高周波化も見据えてメタ表面の再設計も行う. 平成28年度にマイクロ波領域で動作するメタ表面の特性評価も一部行っており,その特性は定性的には計算機シミュレーションの結果と一致しているが,まだ定量的には一致した結果とはいえないのでその原因を解析する必要がある.これまでの実験で,試料の置き方などに熱分布が影響していることが分かっているので,各要素の熱伝達率などのシミュレーションパラメータを適切に選ぶことで実験結果の定量的な再現も可能と考えている.また,抵抗膜の大きさと温度上昇の関係を実験において精査することも必要となる.
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