2016 Fiscal Year Research-status Report
回折格子やエタロンを使用しない新規構造の波長可変レーザー開発
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16K13700
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤本 靖 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 特任研究員(常勤) (70343241)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 波長可変レーザー / ファイバレーザー / 可視光レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
物質と光の相互作用は光の色(波長)と密接な関係があり、適切な波長を選択しうる波長可変レーザーは、医療・創薬、光計測などの様々な分野で広く用いられてきた。一般に多くのレーザーは単一の固定波長で発振するが、広帯域の発光特性を持つレーザー媒質(色素、蛍光ガラス等)と回折格子やプリズムによる分光器のシステムを組み合わせることで波長可変レーザーを達成している。本研究提案は、光学レンズの色収差と光ファイバのスリット様効果を巧みに利用した新しい波長可変レーザー構成に関するものであり、超短尺ファイバによる光ファイバと組み合わせることにより10-20mm程度の超小型波長可変レーザーモジュールも期待できる。以上のアイデアの実現のための物理要因、並びにその仕様を明らかにすることが目的である。 本年度は想定される可視光ファイバレーザー系における損失スペクトルの理解に焦点を当て、原理実証で示された結果を、計算機上で再現することを念頭に、つまり物理現象の理解を中心に研究を進めた。利得ファイバはマルチモードPrドープ耐候性フッ化物ファイバとGRINレンズをベースに計算を進めた。それらの計算結果に基づいて、これまでの実験系で模擬実験を行った。 市販ソフトを用いた際に計算予測されるGRINレンズの焦点距離の波長依存性はほぼ線形依存に近い特性が示されたが、実際の実験結果では、波長可変動作はほとんど起こらなかった。一方で、比較的焦点距離の大きな2枚のレンズを用いた系では波長可変特性が得られている。この理由として、GRINレンズの開口数(NA)が大きい事が考えられる。発振は蛍光ピーク波長において最も起こりやすいため、ファイバの伝播モードの違いにより、発散角が異なり、同じ焦点距離で違う波長が焦点を結ぶ可能性が考えられる。現在は、モードと焦点距離の関係に焦点を絞り、動作解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は原理実証で示された結果を、計算機上で再現し、利得ファイバはマルチモードPrドープ耐候性フッ化物ファイバとGRINレンズをベースに計算を進めた。それらの計算結果に基づいて、これまでの実験系で模擬実験を行った。しかしながら、市販ソフトを用いた際に、計算予測されるGRINレンズの焦点距離の波長依存性はほぼ線形依存に近い特性が示されたが、実際の実験結果では、予測したようには波長可変動作はほとんど起こらなかった。この理由として、GRINレンズの開口数(NA)と伝播モードの関連が考えられ、これに焦点を絞って解析を進めている。発振は蛍光ピーク波長において最も起こりやすいため、ファイバの伝播モードの違いにより、発散角が異なり、同じ焦点距離で違う波長が焦点を結ぶ可能性が考えられる。現在は、モードと焦点距離の関係に焦点を絞り、動作解析を進めている。 研究提案に至った、比較的焦点距離の大きな2枚のレンズを用いた系による波長可変特性が、全てのレンズ系で同じように起こるとは予想してはおらず、それぞれのレンズの特性が動作の制限を与える物として予測していたので、おおむね予想通りと言える。その上で、当初の目的である革新的に小型化された波長可変レーザーと言う目的においてはGRINレンズ等の特殊レンズの利用が望まれるため、その解析動作を理解すると言う点に現在は注力している。その他、どうしてもGRINレンズが不適切であるという結論が出た場合、従来のレンズ系の小型化、もしくは他の小型レンズ系を利用する場合も合わせて検討している最中であり、最終的にはそれらのうち最も効果の高いものを選定する事になる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度前半はGRINレンズ系の利用可能かを、更に詳細に光学計算ソフトを利用しシミュレーションによる検証を行う。それと同時にその他のレンズ系の検討も進め、ベストマッチングの光学系を決定する。また、それらの知見を用い適切なレンズ系を用いた波長可変LMの構築と、提案の波長可変レーザーの特性の理解を深める。以上の成果により、小型波長可変LMスペック(例えば、利用波長範囲、波長可変レーザー線幅及び、その制御性、現存技術を組み合わせた場合のスキャニングスピード等)の決定を行う。また、将来的な10-20mm程度の超小型波長可変LMの可能性について検討する。大まかな進め方は以下の通りである。i)適切なレンズ系の選定(4-8月)、ii)小型波長可変LMの特性評価と知見のフィードバック(7-10月)、iii)上記特性評価を反映した小型波長可変LMの構築(11-2月)、iv)小型波長可変LMの最終スペック決定並びに超小型波長可変LMの検討(1-2月)、v)最終報告:超小型波長可変LMに関する学会発表(応用物理学会)及び、論文発表(2-3月)
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Causes of Carryover |
研究実績の欄にも記入したとおり、当初予定していたGRINレンズによる実験系でのテストが思ったような結果とならなかったため、装置構成に関する物品購入は最小限とし、次年度へとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画であるGRINレンズ系の利用可否を含め、他のレンズ系を活用検討を進めてプロトタイプの設計を進める予定である。次年度当初計画である小型波長可変レーザーモジュールの構築と、合わせて前述の適切なレンズ系の導入調査を行う。
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