2016 Fiscal Year Research-status Report
ウルトラファインバブルの構造特性評価による生体効果の分子機構の解明
Project/Area Number |
16K13722
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
平井 光博 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (00189820)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ウルトラファインバブル / タンパク質 / 脂質 / 溶液散乱 / 放射光X線 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の概要】日本発の技術として微小気泡を用いた産業応用が注目されている。中でも,溶液中で安定に存在する大きさが100nm程度のウルトラファインバブルは大きな可能性を秘めており,医療・薬品分野,健康分野,農業・水産分野での利用が先行しているが,その測定方法すら国際標準化しておらず,その物理化学的な性質や構造,生体物質に与える効果などの構造学的研究は殆ど無く,分子機構は不明である。本研究は,ナノスケールの構造研究に威力を発揮する放射光X線溶液散乱法を適用し,ウルトラファインバブルの構造評価法を確立して,タンパク質や生体膜などの機能構造と生体反応システムに与える効果の分子機序を解明することを目的としている。 【具体的な内容】研究期間内に下記の内容の研究を実施する。 ●溶媒などの拘束条件に影響を受けない,ウルトラファインバブルの構造,界面構造,分散状態,有効電荷等が評価可能な新たな測定法を放射光X線散乱により実現,多様な溶液条件下での構造特性を解明する。 ●ウルトラファインバブルとタンパク質や生体膜などの生体物質との相互作用を解明する。 【平成26年度の研究実績】平成26年度は,バブル測定用の新たな放射光X線試料セルを作成し,空気バブル,窒素バブル,酸素バブルの各溶液,及び,各バブル溶液中にに各種のタンパク質,各種の脂質リポソームを溶解し,その構造特性の変化を広角X線溶液時間分解測定により観測した。その成果の一部を第54回日本生物物理学会にて発表した。タンパク質に関しては分子の広がりの経時変化が観測されたが,タンパク質の種類や分子量,溶媒条件(pH,塩濃度,タンパク質濃度)に依存していた。また,脂質リポソームでは,アルキル鎖の間隔やその動きに変化が見らた。詳細な実験と解析は継続中である。純粋なバブル水の溶液構造に関しては,バブル濃度が希薄であるため,測定条件等の見直しを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
純粋なバブル溶液の放射光X線散乱測定に関しては,試料作成条件,測定条件の見直しが必要であるが,タンパク質および生体膜(脂質膜)への影響に関しては概ね予定通り研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は下記のような研究の展開を行う。 1)純粋なバブル水の測定に関しては,現在作成可能なバブル水の濃度は,最高濃度においても100-200億個/mL程度である。さらに高濃度のバブル水を作成することと,放射光X線の測定時間を伸ばす必要があため,作成条件や測定条件の見直しを検討している。 2)脂質系へのバブル水の影響に関しては,一定の成果が得られつつあるが,脂質の種類,温度,構造相などさらに多様な試料条件での測定・解析を行う必要がある。 3)タンパク質構造への影響に関しては,タンパク質の種類に依存していることがある程度判明しているため,各タンパク質の溶媒条件を変えて,より詳細な検討を行う。 じょうき2),3)に関しては,追試結果を含め,学術論文に投稿する予定である。
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