2016 Fiscal Year Research-status Report
新しい中性子小角散乱測定法によるアミロイド線維中の蛋白質の構造解析
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16K13730
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
藤原 悟 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (10354888)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中性子小角散乱 / アミロイド線維 / 重水素化蛋白質 / シヌクレイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、重水素化蛋白質と通常の蛋白質を様々な割合で混合した系について中性子小角散乱測定を行い、粒子間干渉効果と個々の蛋白質からの散乱を分離することにより、不規則構造中の個々の蛋白質の構造解析を可能とする新しい中性子小角散乱法を提案し、その方法論を確立することを目的としている。そのために本研究では、この新しい方法を、パーキンソン病等の様々な難病発症と関係するアミロイド線維に適用し、これまで困難であった線維中の個々の蛋白質の構造解析を行う。本研究で提案する新しい方法では、重水素化蛋白質の調製が不可欠である。そこで本年度は、重水素化蛋白質調製を実施した。試料として、アミロイド線維を形成するパーキンソン病関連蛋白質α-シヌクレインを用いた。緑藻の光照射下での独立栄養的培養を重水中で行い、得られた緑藻の重水素化ペプトンを栄養素として重水中で大腸菌を培養し、目的の蛋白質を発現させるという2段階の方法により、α-シヌクレインの重水素化を行った。同時に、ルーチンワークとして蛋白質重水素化が可能となるように周辺整備を行った。得られた重水素化α-シヌクレインが、通常のα-シヌクレインと同様の構造を持つことを確認するためにX線小角散乱実験を行った。その結果、いずれも蛋白質も同様の慣性半径で、散乱曲線も同様であることが示され、重水素化による蛋白質の構造変化は起こっていないことが確認された。重水素化蛋白質調製が可能となったことで、次年度における実際の中性子小角散乱実験の準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の成功に不可欠な重水素化蛋白質の調製を本年度の実施目標としていたが、重水素化蛋白質の調製に成功し、構造も通常の蛋白質と同様であることが確認された。したがって、次年度に実施予定の中性子小角散乱実験の準備が整ったといえるため、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には実際に本研究で提案された方法を用いた中性子小角散乱実験を実施するが、まず、それに向けた実験条件の確定を生化学測定や動的光散乱等の物理測定を用いて行い、中性子小角散乱実験の確実な成功を図る。
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Causes of Carryover |
蛋白質重水素化に使用する重水量が当初予定よりも少なかったために購入量が少量で済み、物品費が予定より少額で済んだこと、そして、あいちSRセンターでのX線小角散乱実験実施等のための旅費を、一部、他の財源から支出できたために、予定よりも少額で済んだことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、中性子小角散乱実験の本測定のために本年度より大量の重水素化蛋白質を調製する必要があり、そのための重水を含む試薬類がより多く必要となるので、その試薬品購入費として使用する。また、中性子小角散乱実験の条件確定のためのX線小角散乱実験や動的光散乱実験実施のための旅費が必要となるので、そのために使用する。
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