2018 Fiscal Year Research-status Report
バラスト振動変形挙動評価技術と地震防災・減災機能を強化する鉄道安全技術の構築
Project/Area Number |
16K13734
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
奥村 弘 富山大学, 総合情報基盤センター, 准教授 (30355838)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 弾性体解析 / 波動問題 / 移流方程式 / 有限要素法 / マルチスケール法 / 気泡関数要素 |
Outline of Annual Research Achievements |
波動方程式の解が移流方程式に深いつながりがあることから,移流拡散方程式は弾性体問題や波動現象を解析するうえで重要かつファンダメンタルな微分方程式である.さらに,連続体力学の分野において常に眼目されているNavier-Stokes方程式が連立の移流拡散方程式系とみなせることからも,移流拡散方程式の求解は,連続体力学における諸問題の解明に欠くことができない.近年,計算機による数値解析が盛んにおこなわれており,移流拡散方程式に対するそれも例外ではない.また,微視現象を捕えんとするマルチスケール法の観点から弾性体解析や流体解析等が見直されているが,先にも述べたようにそれらマルチスケール数値解析の礎となるべき移流拡散方程式の求解で直面する諸問題(数値不安定性問題や微視構造の解明など)の解決には至っていない.この行き詰まりに対し,有限要素法における安定化法(SUPG法等)が,マルチスケール変分法(VMS: Variational multiscale method)と密接な関連性にあることが吉報となっている.当該年度では,有限要素近似に用いられる気泡関数要素とマルチスケール変分法の関係性を明らかにし,数値実験により気泡関数要素を用いた有限要素近似の優れた数値安定性と数値解析精度を検証した.このなかで,マルチスケール関数を新たに導入することで,Guermond (1999)が提唱したBubnov-Galerkin法の近似方程式に気泡関数の人工粘性項のみを付加する曖昧模糊なアプローチがどういうわけか数値安定性に優れていた理由が判明した.さらに,Guermondが使った人工粘性係数は,本研究で提案したマルチスケール関数をSUPG法の安定化パラメータとリンクさせることにより,試行錯誤のパラメータではなく,マルチスケール関数に最適な風上(上流)型の人工粘性の値を反映させることが可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
弾性体モデリングによってバラストの動的挙動を精緻に掌握するには,弾性体の振動問題,つまり波動問題に対する高精度な数値解析手法の研究開発は避けられない.波動方程式の解は移流方程式と密接に関わっているため,弾性体解析の高精度化は果たして移流方程式に対する数値解析手法の高精度化に帰着する.さらに,弾性体モデリングの範疇においてバラストの微視的メカニズムを表現するためには,弾性体マルチスケール解析を要する.本研究では弾性体に基づくバラスト数理モデリングの数値解析手法が有限要素法に基づいているため,移流方程式に対するマルチスケール有限要素解析も高精度かつ数値安定性(不連続問題における衝撃捕獲能力も含む)に優れた方法を開発する必要がある.当該年度では,有限要素近似に用いられる気泡関数要素とマルチスケール変分法の関係を明らかにし,優れた数値安定性と数値解析精度を検証することができた.この研究成果は,弾性体問題におけるマルチスケール解析の進展に一助すると言っても過言ではない.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究開発においてバラスト道床抵抗力を向上させる理論的支柱となるバラスト数理モデリングおよびその数値解析手法を概ね確立することができた.また,ハード的対策技術として,高強度人工ブロックを用い,それをバラスト内に点在させるだけで、地震時および常時列車載荷重における鉄道安全性を施すバラスト軌道の耐震性最適強化技術を概ね確立した.ここで,バラスト内に混入する高強度人工ブロックの最適な基礎形状を弾性体解析により検証した.今後の研究推進方策として,OpenAI Gym等を用いた深層強化学習により,バラスト解析のさらなる可能性を探求したい.また,高強度人工ブロック技術のさらなる形状最適化および製造コストダウンを実現するために,コンピュータビジョン向けライブラリであるOpenCVの機械学習に基づいた画像処理によるアプローチ ~ 具体的には「構造解析」,「計算幾何」,「モーション解析と物体追跡」,「パターン認識」,「カメラキャリブレーションと3次元再構成」等 ~ も探求したい.
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