2016 Fiscal Year Research-status Report
水プラズマ廃棄物処理プロセス最適設計のためのマルチフィジックスシミュレータの開発
Project/Area Number |
16K13737
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
茂田 正哉 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (30431521)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 計算物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
他のプラズマと比しても特殊な水プラズマによる革新的な廃棄物無害化処理プロセスを対象とし、1万℃に及ぶ超高温環境での流動現象と物質分解機構や有害副生成物の再合成・輸送機構を再現・予測できる電磁流体力学・プラズマ伝熱学・化学反応学を重畳したマルチフィジックスシミュレータを開発することを目的として、研究を遂行している。平成28年度は、まず土台作りとして、プラズマが形成する複雑熱流動場を高次精度でシミュレートするための計算手法を開発し、超高温のプラズマと低温の電離気体が共存し相互作用する環境において発現する流体力学的不安定性による渦群形成過程とそれらの動的挙動を捉えることに成功した。またプラズマを構成する重粒子温度と電子温度が異なる二温度性を考慮した数値シミュレーションを行い、アークプラズマを緊縮させるガス流を導入した場合のアークプラズマの電磁流体的な特性の調査を行い、特にプラズマ外縁部において熱非平衡性が顕著となることを明らかにした。さらに油脂状物質分解・流動シミュレータの開発を目指し、粒子法の一種であるDEM(Distinct Element Method)法とSPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法を基盤として、まずは金属・スラグ・フラックスといった物質の溶融・流動過程を対象に熱伝達・表面変形・界面移動のみならず温度差に起因する表面張力勾配が駆動するマランゴニ対流も容易にシミュレートできる数値計算コードを開発した。また0次元での扱いではあるが、プラズマ温度領域に至るまでの水の輸送係数および熱力学特性といったマクロスケールの特性を原子・分子スケールから算出するためのモジュールを開発中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、今後予想される数値計算の長時間化に早い時点で対策を講じるために、MPIによる並列化やGPUを使用した並列計算を念頭におき、計算コード内において指示行の追加による依存関係解消、作業配列の活用によるロード数の削減、ループ分割によるコンパイラ自動最適化の促進、IF文の括りだし、ループ融合などを実施し、これらの最適化の有効性を確認しながら遂行したため、時間を要した。またプラズマ温度領域に至るまでの水の輸送係数および熱力学特性といったマクロスケールの特性を原子・分子スケールから算出するためのモジュールを開発中であるが、まだ0次元計算用であり完成には至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、プラズマ温度領域に至るまでの水の輸送係数および熱力学特性といったマクロスケールの特性を原子・分子スケールから算出するためのモジュールを3次元プラズマ流動モジュールとの融合を目指す。またプラズマ流動モジュールにおいて物質輸送の化学的非平衡性を表現できるように改良を施す。加えて、PCBや排水を模擬するものとしてジクロロトルエンおよびフェノール水溶液を廃棄物として想定し、水プラズマ-空気-廃棄物混合系の活性種(OH, O, O+, H, H+, N, N+, C, C+, CH, Cl等)の生成・再結合反応速度を考慮した数理モデルの構築を行う。さらに油脂状廃棄物を模擬したエチレン系ポリマーの温度依存性を考慮した物性値を組み込む。
|