2016 Fiscal Year Research-status Report
超平面配置の自由性・トポロジーとランダムウォークの新潮流
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16K13744
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 拓郎 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (50435971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 朋之 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (70302932)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超平面配置 / 自由配置 / 旗代数 / 剰余的自由配置 / ホモロジー群 / 乱歩 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、まず自由配置の剰余旗の位相幾何的理解のため、Schechtman-Varchenkoの理論を研究し、その簡易化を模索した。その結果、彼らの同型が非常に精緻に構成されており、剰余旗の理解に対応させることの困難さに気づいた。そのため、深く時間をかけて研究する必要があると判断し、理解の方法を若干修正し、以下の二つの視点から剰余旗の位相幾何的特徴付けを目指した。 まず一つ目の方針であるが、剰余的自由配置であるためには、ある超平面への制限が自由でなくてはならない。これはOrlik予想と呼ばれる、反例がすでに見つかっている予想と関連しており、この予想を改良したものを研究し、剰余旗の一部が構成されるための条件を、第二ベッチ数等式という位相幾何的情報を用いて考察した。これは寺尾宏明氏の除去定理を発展させる形で結果がまとまりつつあり、29年度中に論文にまとめる予定である。 二つ目は、剰余旗を定める最も性質のよい対象であるファイバー型配置の剰余旗の、位相幾何的理解である。これについて、ドイツのL. Kuehne氏との共同研究を発展させる形で、重旗の理論が大幅に進展したため、29年度も研究を継続する。これら二つの結果は、剰余旗の位相幾何的理解の新しい基礎をなす結果であり、重要な進展である。 同時に、Schechtman-Varchenko同型は極めて有用な結果であるため、その理解を促進するため、新たな知見を得るための情報収集も実施した。特に熊本大学で開催された組み合わせ論に関する国際研究集会で剰余旗について講演し、聴講者から様々な意見・指摘を得ることで、Schechtman-Varchenko同型の理解を更に深めることができた。 また、研究計画通り、剰余的自由配置のリスト化を推進した。こちらについては順調に進んでおり、乱歩の考察を29年度中には本格化させられると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、本研究の最初のステップであり、また根幹をなすと考えられていたSchechtman-Varchenkoによる、旗代数と超平面配置の補空間の同型写像を用いて、剰余旗を位相幾何的に理解する作業が非常に困難であると判明したため、序盤は若干研究計画の遂行に苦しんだ面があった。しかしながら、上述した通り研究の方向を若干修正し、重旗理論やOrlik予想などと絡めて剰余旗の位相幾何的理解を直接的に進めることで、序盤の遅れを取り戻すことができたと考えている。 他方、剰余的自由配置のリスト化については、予定通り進んでおり、その解析も近く始められる予定である。 これを総合的に判断して、研究計画全体としては概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず初期研究計画の中でボトルネックとなっているSchechtman-Varchenko同型であるが、これを用いた剰余旗の位相幾何的理解自体は、困難ではあるが可能であれば実現したい。そこで次年度以降は、(1)剰余旗と相性の良い同型を自ら構築する、(2)幅広い人材から情報収集を行うことで、Schechtman-Varchenko同型あるいはその変形版を用いた剰余旗の位相幾何的理解を実現する、といった方針を取ることで、この計画を推進しようと考えている。 もし上記方針で剰余旗の位相幾何的理解がうまくゆかない場合には、直接自由配置と確率論との接続を試みることも考えている。 同時に、研究代表者が実施した、局所重旗理論やOrlik予想を用いた剰余旗の位相幾何的理解も更に深めてゆきたい。これらの計画により、研究計画は当初のものより深みを増していると考えている。 また、剰余的自由配置のリスト化は順調に進んでいるため、これに対する乱歩解析は着実に実行してゆく。
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Causes of Carryover |
本年度はSchechtman-Varchenko同型を用いて、剰余旗の旗代数すなわち超平面配置のホモロジー群における理解を明確にすることが最初の目標であり、かつ計画の第一歩であった。しかしその解釈が想像以上に困難であったため、研究代表者は若干計画を変更し、剰余旗の位相幾何の直接的な理解に注力する時間が長くなった。その結果、旅費を用いた研究打ち合わせの回数が想定より減少したため、使用額が特に旅費において、当初の想定より少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、方針を若干転換し、Schechtman-Varchenko同型そのものに拘りすぎず、新しい同型を自ら作ること、およびそのためのアイデアを様々な専門家から吸収することを目的とし、情報収集のための旅費として研究費を積極的に使用してゆく。更に、本計画の端緒となる論文を執筆した西オンタリオ大学のGraham Denham氏と議論を深めるために、海外出張などのため研究費を使用することを考えている。これにより、研究に新たな進展が見込まれる。
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