2016 Fiscal Year Research-status Report
一般化された複素構造, 4次元微分トポロジー, 非可換代数幾何, 導来圏の研究
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16K13755
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
後藤 竜司 大阪大学, 理学研究科, 教授 (30252571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大川 新之介 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60646909)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 一般化された複素構造 / 非可換代数曲面 / ポアソン構造 / 一般化されたケーラー・アインシュタイン構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケーラー多様体上に非零な正則ポアソン構造があると、ポアソン構造のランクの変化に応じて、構造のタイプ数がジャンプする一般化された複素構造が構成され、興味深い研究対象となっている. 特に、複素曲面上、ポアソン構造により得られた一般化された複素構造に関しては、ポアソン構造の零点集合が非特異ならば、その変形は常に非障害的であり、変形は零点集合の補集合の第二特異コホモロジーにより与えられるという顕著な結果を証明した. この非障害性定理の非可換代数曲面での対応物をいろいろと調べた. また、 複素射影空間、デルベッゾ曲面など特別な複素曲面上の一般化された複素構造と非可換代数曲面との対応を具体的に調べた. ケーラー幾何学において、スカラー曲率がモーメント写像として現れることが知られている(Donaldson-Fujiki の定理). 申請者は昨年度の研究において一般化されたケーラー多様体においても、無限次元のシンプレクテッィク幾何の枠組みが適用され、モーメント写像が構成され、このモーメント写像が一般化されたケーラー多様体のスカラー曲率と見なせることを示した. 一般化されたケーラー多様体では、Levi-civita 接続はうまく定義されない. また曲率もテンソルとはならないなどの問題があるのだが、スカラー曲率、およびリッチ曲率はモーメント写像により、自然に定義される点が注目すべき点である. これらの研究成果は論文 scalar curvature as moment map in generalized K\"ahler geometry にまとめて、Arxiv 上の発表し、また、海外の研究集会でも講演した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般化された複素構造と非可換代数幾何、導来圏などとの関連については、共同研究者の大川氏と議論を重ね、また、国際研究集会に参加して研究の現状の把握に務めた. 現在、新しい結果はまだ得られていない状況である. しかし、一般化されたケーラー幾何の研究については進展があった.
一般化されたケーラー幾何学において、通常のケーラー幾何、リーマン幾何のようにレビ・チビタ接続の拡張を考えると様々な困難に直面し、レビ・チビタ接続の適切な一般化された定義を与えることは出来ない.また、ベクトル束の曲率を一般化されたケーラー幾何学にて通常のように定義すると、曲率が微分作用素となってしまい、通常の幾何学のようにテンソルにならない. そこで、通常の方法は諦めて、シンプレクティック幾何におけるモーメント写像に着目した. ケーラー幾何において、スカラー曲率がモーメント写像として現れる現象が知られている.一般化されたケーラー幾何学においても、シンプレクティック幾何の枠組みが適用できるか、調べてみると、この枠組みは自然に拡張され、ケーラー幾何の場合はシーゲル上半空間をファイバーとするファイバー束の切断全体の空間が無限次元のシンプレクティック多様体となるのであるが、一般化されたケーラー多様体の場合は、type AIII のリーマン対称空間(有界複素領域)がファイバーとなるファイバー束の切断全体の空間をシンプレクティック多様体とすることで、自然な拡張となっており、モーメント写像として、一般化されたケーラー多様体上のスカラー曲率が定義される. この発想の転換が研究を進展させるキーポイントとなっている.
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Strategy for Future Research Activity |
非可換代数幾何、導来圏などについては、引き続き、共同研究者とともに、議論を重ねる. 複素3次元の cubic 超曲面上の非可換代数幾何と一般化された複素構造の関連を明快にすること、更に複素3次元のツイスター空間上には非自明なポアソン構造がある場合があり、研究を進める. 申請者のこれまでの研究により、ケーラー多様体上に正則なポアソン構造があれば、通常のケーラー多様体を非自明な一般化されたケーラー多様体へ変形出来ることが証明され 一般化されたケーラー多様体が豊富に存在することが示された(これは Goto's deformation theorem として確立している). Donaldson-Tian-Yau 予想の解決に代表される最近のケーラー幾何学の急速な発展を踏まえて、一般化されたケーラー幾何学においても一般化されたケーラー・アインシュタイン構造、一般化された K-安定性の概念を導入し、この二つが同値であるという予想を定式化し、さらにはその解決を目指したい. さらに、ベクトル束の場合の 小林・Hitchin 対応を一般化されたケーラー多様体の場合に拡張することを目標とする. 今年度はベクトル束の場合にこのストーリーを拡張する. ケーラー多様体上のベクトル束において、アインシュタイン・エルミート接続の存在と正則ベクトル束の安定性の同値性を与える小林・Hitchin 対応はよく知られている. 一般化されたケーラー多様体上、一般化された安定正則ベクトル束との同値性を示し、小林・Hitchin 対応を一般化されたケーラー多様体へ拡張することを目標にする. ポアソン・モジュールや co Higgs 束など、具体的な一般化された正則ベクトル束(層)にたいしてこの安定性は非可換代数幾何と密接に関連してると予想される.
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Causes of Carryover |
2017年9月に東北大学にて、第3回日中幾何学研究集会、11月に第23回複素幾何シンポジウム金沢を開催する予定であり、国内外から多くの研究者を招聘するため、次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年9月の第3回日中幾何学研究集会では3名程度の中国人の研究者を招待する予定であり、また、11月に第23回複素幾何シンポジウム金沢では、3名程度の外国人研究者を招待する費用として使用する予定である. また、30名以上の国内からの参加者の一部にも旅費などの援助を行う予定である.また、研究用の資料、書籍、雑誌の購入、研究上のコンピューター、プリンターなどの購入にも使用する予定である.
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