2018 Fiscal Year Research-status Report
一般化された複素構造, 4次元微分トポロジー, 非可換代数幾何, 導来圏の研究
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16K13755
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
後藤 竜司 大阪大学, 理学研究科, 教授 (30252571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大川 新之介 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60646909)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 一般化された複素構造 / ポアソン構造 / ポアソン・モジュール / アインシュタイン・エルミート計量 / 小林・ヒッチン対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績は次の二点である. (1) 複素曲面上のポアソン・モジュールの安定性, 不安定性の研究(2) 一般化されたケーラー多様体上のベクトル束に関する小林・ヒッチン対応の確立. 以下(1)について詳述する. del Pezzo 曲面においては反標準束の正則なセクションは正則ポアソン構造となり、ポアソン構造の零集合は反標準因子を与える. 正則ポアソン多様体上の正則ベクトル束がポアソン構造と適合したモジュール構造を持つとき, ポアソン・モジュールという. ポアソン・モジュールは反標準因子において、対数的な極をもつ平坦接続と同値であり, ベクトル束に D-module の構造を与える. del Pezzo 曲面上の有限個の点集合 Y にサポートを持つイデアル層をテンソル積した直線束からの短完全列による extension により, ランク2の正則ベクトル束を構成する方法をセール構成という. サポート集合 Y がポアソン構造の零集合上にあれば, セール構成で得られた正則ベクトル束はポアソン・モジュールとなることを示した. ポアソン・モジュールのslope を定義し, 部分ポアソン・モジュールにたいして, slope の間の不等式が常に成立するときに, ポアソン・モジュールは安定という定義を与えた. 2次元の複素射影空間上の点集合 Y を直線と反標準因子の交わりとして, ポアソン・モジュールを構成すると, 通常の正則べクトル束としては安定ではないのだが, ポアソン・モジュールとしては安定となることを示した. これは(2)の小林・ヒッチン対応において, 通常のベクトル束としては、アインシュタイン・エルミート計量は持たないが, 一般化された正則ベクトル束としては, アインシュタイン・エルミート計量をもつ. これらの結果は一般化されたケーラー幾何の新たな展開を与えると思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では, 非可換代数幾何と一般化された複素幾何学の対応をつけることを目指していたが, あまり進展が見られていない. しかし、ポアソン多様体上のポアソン・モジュールの研究において, 進展が見られた.
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Strategy for Future Research Activity |
del Pezzo 曲面上のポアソン・モジュールは一般化された正則ベクトル束の顕著な例となっているだけでなく, 複素幾何, 代数幾何, ポアソン幾何の研究対象としてとても興味深いものである. 正則ベクトル束の場合のように, ポアソン・モジュール全体の集合は有限次元のモジュライ空間をなすことを示しているので、今後はこのモジュライ空間の研究を進める. また, 当初の研究目標、非可換代数幾何と一般化された複素幾何学の対応において, このポアソン・モジュールは大切な役割を果たすと思われる.
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Causes of Carryover |
次年度に国際的な研究集会を計画しており、その費用が必要である. 具体的には 第5回日中幾何学研究集会、第25回複素幾何シンポジウムなどである.
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Research Products
(7 results)