2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13764
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長田 博文 九州大学, 数理学研究院, 教授 (20177207)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 無限粒子系 / クーロンポテンシャル / ケプラー問題 / 相転移現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、原点から一つだけ粒子を取り除いた他は、周期的に格子点上に粒子を配置し(これらを環境粒子と呼ぶ)、別の一つのブラウン運動粒子が環境粒子系から、逆温度βかつ2次元クーロンポテンシャルで反発力を受けながら運動するときの、拡散極限を調べた。そして、この状況でβについて相転移が起こることを証明した。 通常の状態より、原点で環境粒子が欠けているため、完全な環境粒子の周期的配置よりも、一つ反発力が少ない分、原点への引力が働く。 とはいえ、従来研究されてきた枠組みに入る通常のルエルクラスのポテンシャルの場合には、その効果は拡散的スケーリングでは無視でき、極限は完全に周期的な場合と同じものになる。 今回の結果のポイントは、干渉ポテンシャルが、2次元クーロン力(対数関数)の場合には、長距離強相互作用の効果で、拡散的スケーリングで干渉ポテンシャルの効果が極限まで残ることを示している。特に、βの値に関する、極限係数の退化/非退化についての相転移を示したことである。 更にその相転移が起こる温度は、周期的配置(つまり原点にも環境粒子がいる状況)での、均質化問題の係数(有効伝導率)を用いて、具体的に表示できることを証明した。均質化問題の係数(有効伝導率)自体は、数値的にわかるわけではないが、相転移点がそれで表現できるという事実は興味深い。 証明のアイデアは、他の研究者が証明した熱核の評価を使うことで、従来温めていた手法より、証明が簡明になった。本年度、論文としてまとめていきたいと思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相転移点が、有効伝導係数を用いて具体的に欠けるということは、想定していなかったので、この点は思ったよりうまくいったと思う。また、熱核の評価を使う手法は、既存の結果をうまく応用しており、良かったと思う。モスコ収束の概念がこの問題にうまく対応していることも気が付き、この点も良かったと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
均質化問題の相転移の結果を、自己拡散係数の場合に拡張していきたい。また、研究協力者によるシミュレーションを行っていき、自己拡散係数の相転移点の情報を掴む。
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Causes of Carryover |
シミュレーションを実行して、相転移に対する予想を調べる予定であったが、より理論的に追及する段階を続ける方がより多くの成果を得ると判断して繰り延べた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度はギニブル粒子の劣拡散挙動について、研究協力者によるシミュレーションを行う。
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