2016 Fiscal Year Research-status Report
無限大不変測度を持つエルゴード的変換の多重再帰性とエルデシ予想
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16K13766
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
仲田 均 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 名誉教授 (40118980)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エルゴード理論 / 多重再帰性 / エルデシ予想 / 不変測度 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の立ち上げとして、エルゴード的ラムゼイ理論における多重再帰性の役割を吟味し、等差数列に関するエルデシ予想の解決に向けた無限大不変測度を持つ変換のエルゴード理論における多重再帰性の研究の位置づけを確認した。特にエルゴード的ラムゼイ理論とフルステンベルグによる多重再帰定理の証明に関して8月に行われた解析数論のセミナーにおいて解説講演を行った。さらに、エルデシ予想と無限大不変測度を持つ変換のエルゴード理論に関しては10月に行われた数理解析研究所における共同研究において最近の研究成果とあわせて総合的な講演を3回に分けて行った。12月にはフランスのマルセイユの研究所(CIRM)で行われた研究集会において複素数連分数のエルゴード理論に関する新たな研究成果を講演すると共に、本研究に深い係わり合いを持つ分野において活発な研究活動を続けているアメリカのセザール・シルヴァ教授と多重再帰性に関する新たな研究の方向性について研究情報交換を行い、お互いのこれまでの研究成果を発展させ共同で論文を作成し、学術論文誌において公表していくことに合意した。一方で、テルアビブ大学のジョン・アーロンソン教授達と無限大不変測度を持つエルゴード的変換の一つの典型となるシリンダー変換に関してその挙動を研究した。そして回転数が有界型の場合について、ある種の極限定理が成立することの証明に成功した。この成果は Israel Journal of Mathematics に受理され、将来刊行される予定である。また、エルゴード理論と数論の結びつきを与える重要なポイントとなる複素連分数に関する研究においても自然拡大の構成についてその研究に大きな進展をみた。これについては現在論文を準備中である。さらに、連分数を軸とした数論とエルゴード理論の関わりについてオランダのコール・クラーイカンプ准教授と共同研究を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
伝統的なエルゴード理論におけるラムゼイ理論との係わり合いを明確にすることができたことで本研究の立ち上げが順調に行われた。シリンダー変換の研究においてジョン・アーロンソン教授との共同研究により、これまで解決困難であった部分を克服し、成果をまとめ上げた論文が当該分野において評価の高い Israel Journal of Mathematics に投稿し出版を受理された。また、これまで研究討論する機会に恵まれなかったセザール・シルヴァ教授と多重再帰性に関する共同研究を開始することが出来、今後の研究の進展に新たな可能性が開けた。 おなじくオランダの研究者との共同研究の開始により本課題への新しい角度からアプローチの可能性が生じた。主に以上の理由から、現時点で研究は順調に進められていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度はセザール・シルヴァ教授との研究を始めとしてこれまでの研究を進めながら、無限大不変測度を持つエルゴード的変換の弱混合的拡大について研究を行う予定である。特にこの拡大により多重再帰性の伝播が成立しているかどうかを調べる。また、オランダの研究者との共同研究も継続する。また、円周上の区分的回転から作られるシリンダー変換の再帰性について研究を行う。以上の研究計画遂行のために、ヨーロッパおよびイスラエルの研究者との研究交流を積極的に行う。
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Causes of Carryover |
ドイツ語の文献中の研究に必要な一部分(数ページ)の翻訳を専門分野の大学院生に依頼する予定で、それにかかわる謝金を予定していた。しかし共同研究者を通して、必要情報が確認できたため、謝金が不要になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究討論のための国外出張(フランス・オランダ)に45万円を予定。また、国内研究者との研究討論のための出張旅費(京都・札幌)として15万円を予定。また、研究関連図書として4万円、研究補助のための謝金として4万円を予算として見込む。
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Research Products
(8 results)