2016 Fiscal Year Research-status Report
演繹的・帰納的セル・オートマトン構成法が織りなすデータと数理モデルの相互横断研究
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16K13772
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中野 直人 北海道大学, 理学研究院, 研究院研究員 (30612642)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮路 智行 明治大学, 研究・知財戦略機構, 特任講師 (20613342)
川原田 茜 京都教育大学, 教育学部, 講師 (70710953)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | セル・オートマトン / 応用数学 / 統計的モデリング / 偏微分方程式 / 数値解析 / データ主体解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,現象の新しいモデリング手法として統計的セル・オートマトン(CA)構成法を提案している.これは状態の遷移の本質的な成分をデータから抽出することを目的としており,(A) CAの局所規則の選択性に対する数値解析的研究(演繹的アプローチ),(B) データに対して定量的に適合するモデル化手法の精緻化(帰納的アプローチ)という両面から統計的CA構成法の確立を目指すものである.平成28年度は,研究計画の通り,(A)と(B)の双方において,空間一次元の場合に限定し,統計的CA構成法に関する数理科学的理解の深化を目指した.具体的には以下の通りである. (A): 偏微分方程式(PDE)から統計的にCAを構築する手法の改良をおこなった.CAは時空間と状態が離散値を取るモデルだが,適切な値の変換により,元のPDEの解と比較が可能である.そのため,まずは拡散方程式に対して,定量的な近似モデルとしての適切なセルの取り方や状態離散化を数値解析的見地から検討した.また,この手法は区間演算と関係があり,統計的CA構成法で導出される局所規則について,その選択法則に対する数学的な解析が可能となった.ここで得られた知見は論文として発表した.また,それを参考にして,拡散現象だけでなく,移流や波動など他のPDEに対する本手法の適用可能性についても漸次検討を進めている. (B): 研究代表者らによってこれまで得られた,データのみから統計的にCAを構成する帰納的手法を精緻化した.本モデリング手法によるセル配置や状態数の設定は適切な表現力をもつモデルの構築のためにも重要である.この場合,セルの数や状態数を増やすと同時に推定すべきモデルパラメータが増えるが,(A)における適切なセルの取り方などの知見を援用した対処法を施し,粘性Burgers方程式の解挙動を模倣するCAの構成に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,(A),(B)両方のアプローチにおいて当初の予定通りに成果が得られているのが主な理由である.研究代表者のデータ解析の知見に加え,研究分担者の持つセル・オートマトンと数値解析学の専門知識を合わせ,かつ3者の緊密な連携の下で研究が推進できたことが肝要であった.そのため,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は,前年度に得られる成果を統合し,演繹的(A)・帰納的(B)の両アプローチから横断的にCA構成法を精緻化することを目標とする. まず,平成28年度の(A)におけるCA構成手法のロバスト性を考察する.本手法によって得られる局所規則は用いる数値解法に依存しているため,本手法が解法によらずにかつ安定的にPDEの時間発展の情報を抽出するか否かを検証することは重要である. また,原理的には空間のN点を用いる陽的差分解法からは隣接Nセルに対して定まる局所規則の構成が可能であるが,その局所規則を縮約することで隣接Mセル(M≦N)に対する確率的局所規則を導くことが原理的に可能である.前年度の(B)におけるCAの表現力とデータ効率の関係性を用いることで適切な縮約の方法を見出し,時間発展の骨子となる情報を保持する最小のMの抽出を目指す. さらに,差分法で使用する空間分点数とそれに対応する統計的CAの表現力との関係性を数値解析的に調べることで,本CA構成法の数学的構造に関する理解を深化させる. 本研究課題では主に空間一次元のPDEやデータに対する統計的CA構成法に関して解析することを目的としているが,ここで述べた方法論における演繹的(A)・帰納的(B)アプローチ双方の二次元以上の問題への一般化も模索する.豊富なパターンをもつ二次元以上の現象に対しても本手法の改良と適用可能性を検討し,新たなデータ駆動型モデリングのための数理基盤の確立を目指す.
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Causes of Carryover |
数値計算手法の工夫から当初の予定より計算機関連の消耗品の購入を押さえることができたことが主な理由である.次年度では研究の進展に応じて本格的な数値計算の実施を計画しているため,そのための消耗品費として繰り越すこととした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由の項目で述べたとおり,次年度では研究の進捗に合わせて,統計的CA構成法の改善や得られたCAモデルによる数値シミュレーション結果を格納する記録媒体を確保する必要がある.それらに充当する予定である.
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Research Products
(7 results)