2017 Fiscal Year Research-status Report
演繹的・帰納的セル・オートマトン構成法が織りなすデータと数理モデルの相互横断研究
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16K13772
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中野 直人 京都大学, 国際高等教育院, 特定講師 (30612642)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮路 智行 明治大学, 研究・知財戦略機構, 特任講師 (20613342)
川原田 茜 京都教育大学, 教育学部, 講師 (70710953)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | セル・オートマトン / 応用数学 / 統計的モデリング / 偏微分方程式 / 数値解析 / データ駆動解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,現象の新しいモデリング手法として統計的セル・オートマトン(CA)構成法を提案している.これは状態の遷移の本質的な成分をデータから抽出することを目的としており,(A) CAの局所規則の選択性に対する数値解析的研究(演繹的アプローチ),(B) データに対して定量的に適合するモデル化手法の精緻化(帰納的アプローチ)という両面から統計的CA構成法の確立を目指すものである.平成29年度は,研究計画の通り,(A)と(B)の両アプローチから横断的にCA構成法を精緻化することを目標とした. そのため,帰納的に導出した統計的CAの解析的な表現を試みた.非粘性Burgers方程式では特性曲線の方法で解を記述できるため,得られるべき統計的CAの局所規則を解析的に計算することができた.これは統計的CAの演繹表現と言える.ここで得られる局所規則は統計的CA計算時のパラメータに依存して定まるものであるが,そのパラメータ依存性も込めて明らかにすることができた.これは,実際の統計処理によって得られる統計的CAの正当性の評価につなげられるため,(A)と(B)の両アプローチによる横断研究としては重要な結果と言える.また,適切な条件下では,十分小さい粘性係数を持つBurgers方程式の解は非粘性Burgers方程式の解と定量的に近いため,解析的に得られた非粘性Burgers方程式の局所規則の演繹表現を応用して,粘性Burgers方程式に対する得られるべき統計的CAの評価が可能となった.粘性Burgers方程式に対しては超離散法によるCAの導出が知られているが,我々の手法は元の方程式の解挙動を適切に模倣するCAの導出方法であるため,統計的CAモデリングの有効性を支持する結果と言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,演繹的・帰納的なCA構成アプローチを横断する成果が得られているのが主な理由である.研究代表者のデータ駆動モデリングの知見に加え,研究分担者の持つセル・オートマトンと偏微分方程式の専門知識を結集させることができ,かつ連携研究者からも力学系と超離散法の知見について情報蒐集できたこともあり,研究チーム全体で密な連携の下で研究が推進できたことが重要であった.そのため,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,局所規則の演繹表現の理解を深化させ,局所規則の選択性に関する理論を精緻化させる.平成29年度では粘性Burgers方程式の統計的CAを非粘性の場合で評価したが,粘性Burgersの場合は熱核によるDuhamelの原理を用いて方程式を積分形で表現することが可能であり,その時間発展を評価することで統計的CAの局所規則の演繹表現を計算したい.また,本統計的CA構成法は,少ない状態数でも複数の伝播速度を持つBurgers方程式の解挙動を模倣するCAを構成可能であったため,本質的に現象の表現力が豊富なモデリング手法である.そのため,この手法を2次元のパターン表現モデルに適用させることで,統計的CAモデリングの応用可能性をさらに広げていきたい.
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Causes of Carryover |
(理由) 数値計算手法の工夫から当初の予定より計算機関連の消耗品の購入を押さえることができたことが主な理由である.次年度では研究の進展に応じて本格的な数値計算の実施を計画しているため,そのための消耗品費と大型計算機使用料などのために繰り越すこととした. (使用計画) 理由の項目で述べたとおり,次年度では研究の進捗に合わせて,統計的CA構成法の改善や得られたCAモデルによる数値シミュレーションを網羅的に行う予定である.さらには大規模計算による計算結果を格納する記録媒体を確保する必要がある.それらに充当する予定である.
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Research Products
(2 results)