2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13773
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
山田 俊皓 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (50754701)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 確率微分方程式の弱近似 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では従来と異なる新しい確率微分方程式の高次弱近似法(確率微分方程式の解の期待値の高次離散化法)を構築することを目的としている。当該年度はマリアバン解析を用いた短時間漸近展開による近似作用素を構成し、これを繰り返し繋ぐことで確率微分方程式の解の期待値の精度の良い離散化を実現した。本方法は、ブラウン運動の多項式によって近似を構成するので、確率テイラー展開で現れるような重複確率積分の数値計算は必要ない。また、多次元の確率微分方程式に対して適用できることが利点である。ファイナンスではデリバティブの数値計算やリスク管理においてテスト関数が滑らかでない場合、さらには不連続の場合に確率微分方程式の弱近似が必要になることが多々あるが、本研究ではテスト関数の性質が良くない状況でも提唱する方法が利用可能であることを示した。これは自明ではなく、従来の高次近似法はその性格上テスト関数の滑らかさを要求するが、本研究ではマリアバン解析をうまく援用することでこの点を回避した。特に、テスト関数が可測関数と呼ばれる一般の場合でも適用できることを示した。Yamada (2017)では、ブラウン運動の多項式を重み付け(マリアバンウエイト)による新しい具体的なアルゴリズムを構成し、精緻な近似誤差を行った。さらに実務で用いられるファイナンスモデルに適用して数値実験を行い、高次離散化が機能していること、また理論と整合していることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
既に本科研費研究に関する論文が応用数理・数値計算の専門学術誌に受理されており、当初の予定より早く進んでいる。特に、多次元の確率微分方程式で記述される数理モデルにおいてテスト関数が滑らかでない場合にも適用可能な具体的な近似アルゴリズムの構成法を提示できた。また、高次離散化に関連する金融実務への応用を意識した近似法を構成し、これも金融工学の専門誌に受理された。さらに、これらの方法の発展形のスキームを概ね完成させており、既に新たな投稿に向けた準備作業に取り掛かっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在構築した離散近似法をより効率的に行うため、離散化間隔に関する精緻な解析を行う予定である。 また、離散化そのもののオーダーも上げてさらに精度の良い方法や新しいシミュレーション法を構築する。 さらに確率微分方程式の解の期待値を初期値に関して微分した量、偏微分方程式の解の微分を高次離散化する方法を構成・整備する予定である。また、現在までに構築した方法とは別に、マルコフ連鎖による効率的な近似法を構成する予定である。
|
Causes of Carryover |
計画を微修正したことにより物品購入を一部見合わせたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品購入を行う。
|
Research Products
(5 results)