2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13775
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 冬彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (90456161)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 量子トモグラフィ / ベイズ統計 / 漸近理論 / 決定理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ベイズ統計、特に統計的決定理論の立場から、量子物理実験で実際に使える範囲でよい推定・測定を検討することである。具体的には、主に射影測定を想定し、自然と思われる事前分布を設定した下でベイズ推定量を使う。従来の量子物理では期待値とその高次モーメント(特に分散・共分散)で測定・推定方法を評価する。最近は原理的に達成可能な推定誤差の下限(量子クラメル・ラオ型下限)を「局所的に達成」する適応的な測定方法も議論されている。これらは古い統計学を踏襲しており、「サンプルサイズを増やした極限で局所的にベスト」な測定・推定を考えている。一方で本研究は「有限標本での一様な改善」を念頭においている。有限標本では、モーメントマッチングや不偏推定が必ずしも良いとは限らない。特に、29年度は物理学的には自然と思われてきた以下の測定について、具体例で統計理論的に詳細に検討した。 a. p個のObservableの期待値に相当するパラメータはp種類の射影測定でデータを収集、推定する(情報完全な測定); b. 1量子ビットでは情報完全な測定の中でもPauli行列に相当する射影測定(直交するObservableたち)を用いる。 有限標本での精密な理論評価は困難であり、数値計算 について協力予定だった研究者も職業的な事情で参画できなかった。そこで、29年度はサンプルサイズが十分大きい下での理論解析に集中した。まず、測定の自由度を調整パラメータとして導入し、真値の動く範囲で測定同士の比較を行う方法を考案した。また、1量子ビットのパラメータ3つのうち1つを制限した2パラメータモデルの例で以下を得た。 1)従来の射影測定 b は非許容的。つまり、一様に改善する情報過剰完全な測定が存在する。 2)情報完全な射影測定に制限すると互いに許容的であり、特に従来の射影測定 b はミニマックス。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細かい点でアップデートはあったものの研究計画に記載した方向性に沿って進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究提案時にはなかったが、Hou et al (2016)が量子光学実験で推定誤差の下限(Gill and Massar (2000))を漸近的に達成するような手法を実装した。我々の提案手法との数値的な比較や、両者を組み合わせたさらなる推定誤差の改善について検討する。また、東大・中村研で超電導量子ビットの実験データ解析を担当している杉山助教との共同研究もさらに進める。玉川大学に異動した坂下氏には数値計算を行ってもらう。これら一連の結果を論文の形で投稿・再投稿する。
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Causes of Carryover |
業務の都合で国内外の研究集会を断念したため未使用の旅費が生じた。また、坂下氏の事情が悪くなり、研究打ち合わせの訪問ができなかったこともある。初年度に購入した計算機が十分な性能を有したこと、および、古い計算機類のリプレースを想定していたが不要だったことなどで物品購入もあまり生じなかった。機材のリプレースは本年度も発生しうる。また、対外的な発表と坂下氏が職業的に安定したことで共同研究を再開し、訪問出張を予定している。その他、投稿料に使用することも予定している。
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