2016 Fiscal Year Research-status Report
先進的手法を用いた宇宙流体シミュレーションの高速化
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16K13786
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
富田 賢吾 大阪大学, 理学研究科, 助教 (70772367)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / 計算物理 / 理論天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は大規模な宇宙流体シミュレーションのために、近年主流の大規模並列計算機、特に既存のCPUとは異なる新しいアーキテクチャであるIntel Xeon Phiを搭載した計算機で高い性能を実現するコードを開発することを目的としている。コードとしては米国プリンストン大学と共同で開発している公開磁気流体シミュレーションコードAthena++を用いる。今年度は新型のXeon Phi(Knights Landing)上でのAthena++の評価を行い、大規模な変更をすることなく既存のCPUと比べてコア当たり約70%程度、Xeon Phi 1機で通常のXeon CPUの45コア(国立天文台の大型計算機Cray XC30のほぼ2ノードに相当)という良好な性能を得ることができた。これは自己重力などの物理過程を含まない磁気流体シミュレーションであれば、Xeon Phiを搭載した大型計算機で大規模計算を実行するのに十分な性能である。 本研究のもう一つの目標は大規模並列計算機でも高い性能を発揮できる自己重力ソルバの開発である。今年度は自己重力のポアソン方程式の数値計算法について手法を検討し、Full MultiGrid Cycleに基づくMultigrid法を採用して実装を開始した。現時点ではまだ実装の途中であるが、来年度前半には開発を完了し大規模並列計算機に向けた最適化を進める予定である。 Athena++コードは以下のWebページ(http://princetonuniversity.github.io/athena/)で随時公開している。また日本語のドキュメントを整備し公開している(http://vega.ess.sci.osaka-u.ac.jp/~tomida/athena/)他、国立天文台CfCAの協力を得て実習形式の講習会を開催し40名以上の参加者を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Xeon PhiはこれまでのCPUとは異なるため高速計算を行うためには特別な工夫が必要であると予想していたが、実際には当初予期していたよりも容易に十分高い性能を発揮することができた。これはAthena++コードの基本設計が現代的な計算機に合致していたためであると考えられる。自己重力ソルバの手法の検討に時間を要したためまだ開発途中であるが、開発自体は概ね想定通りのペースで進んでいる。総じて概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は引き続き自己重力のポアソンソルバの開発を最優先で進める。特に、解適合細分化格子(Adaptive Mesh Refinement)上で高い性能を発揮することが宇宙物理の数値シミュレーションを今後大規模化するためには必須であり、そのために必要なあらゆる手法を検討する。その一環として実装の最適化やアルゴリズムの検討だけでなく、Unified Parallel Cのような現代的な計算機技術も必要に応じて取り入れる。自己重力の開発が完了次第、輻射輸送等の物理過程に拡張しつつ、原始惑星系円盤や星形成の実際の宇宙物理学のシミュレーションによる研究を行う。
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Causes of Carryover |
Xeon Phiを搭載した計算機の性能が未知数であったため、今年度予算では1機のみ購入し性能の評価を行った。また販売会社のキャンペーンにより想定よりも大幅に安く購入することができた。 旅費については関連する研究費が採択されたため、当初予定していた出張旅費の一部をそちらから支出したために予定よりも必要金額が少なくなった。 以上の理由により次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Xeon Phiの性能が良好であったため、もう1機追加で購入し並列計算に利用する(申請時の計画では4機購入する予定であった)。2機を接続する高速ネットワークを整備し、計算結果を格納するハードディスクアレイを購入する。
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Research Products
(5 results)