2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13790
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
木内 等 国立天文台, チリ観測所, 准教授 (90358911)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光干渉計 / ヘテロダイン / 光ファイバ結合 / 相関処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
光領域においてヘテロダイン周波数変換技術を確立できれば、電波干渉計のように光を波として受信して位相情報を用いることで、複数の望遠鏡で受信した信号を掛け合わせて実効的に大きな口径の望遠鏡を合成でき高角度分解能化が期待できる。さらに光ファイバ部品で光干渉計の構成が可能な場合、光軸アライメントの必要がなくなり、望遠鏡部と相関処理部を独立なシステムとして構成でき大型望遠鏡への応用の可能性が期待できる。今回、近赤外領域において、ファイバベースでのヘテロダイン方式光干渉計の基本技術開発を本研究の目的とする。本研究により光位相を用いた超高空間分解能の干渉計を実現するための技術を実証する。 平成28年度は、基本的なヘテロダイン光干渉計のアナログ部を製作した。実際の太陽観測を行いフリンジ(相関)が回転した状態での相関を得ることで光ヘテロダイン方式の基本実証を行った。 パンチルト雲台とファイバコリメータをそれぞれ2式購入し、太陽のプログラム追尾系の製作、狭線幅レーザを用いた光ヘテロダイン干渉計アナログ部の製作を行った。実際の太陽プログラム追尾による干渉実験を行い弱いフリンジ信号を検出した。今後、フリンジ回転を止めることで、よりはっきりとしたフリンジが得られるものと思われる。しかしながら、実験途中にパンチルト雲台の1台の電源が落ちる問題が発生したため、メーカにて修理を行っている。また、ファイバコリメータの空間光とのカップリング及び光・電気変換部性能が想定より低いことが分かり、この点も改修予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最も基本的なファイバベースのヘテロダイン光干渉計を製作した。ファイバコリメータ(小型レンズでファイバと自由空間とを結合)を購入し、光分配・合成器、高感度光検出器(フォトミキサ)を2素子分とローカル周波数用高安定レーザを用いた最も基本的なヘテロダイン光干渉計アナログ部を製作した。また、購入したパンチルト雲台を用いた太陽のプログラム追尾系を製作した。 実際の太陽プログラム追尾観測を行いフリンジが回転した状態での弱い相関を得ることができ、光ヘテロダイン方式の可能性が見えてきた。 パンチルト雲台の故障、ファイバコリメータの空間光とのカップリング及び光・電気変換部性能が想定より低いなどの改修点はあるが、概ね計画に乗っている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘテロダイン方式を用いることで新たに考慮しなければならないことがある。その一つが相関フリンジの高速回転である。フリンジの回転は、ヘテロダイン周波数変換を行うことで必然的に発生する。このフリンジ周波数は、天体と基線ベクトルとの位置関係で変化する。このため従来の周波数変換を行わない光干渉計では遅延追尾のみで良かったものが、遅延追尾と同時にフリンジ回転補正も考慮しなければならなくなる。フリンジ回転補正は、外部発振器を用いてアナログ的にフリンジ周波数の逆回転を行うことでフリンジ回転を止めて短時間積分を行うためのものである。全てデジタルで行うことが理想であるので、可能ならデジタルボードを用いたフリンジ補正信号発生器の製作やデジタル相関器を用いることも試みる。 ファイバコリメータ・光電気変換部の性能向上を図ると同時にパンチルト雲台の修理完了を待ち、フリンジ回転補正を行える簡易システムの構築を図ることで相関振幅の信号対雑音比の向上が望め、高角度分解能干渉計の実現の可能性を探る。
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Causes of Carryover |
年度末にパンチルト雲台が故障し、修理のための費用を用意しておく必要があったため。 また、システムの改善点(ファイバコリメータ・光電気変換部の性能向上)が明確になったのでそれに充てるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ファイバコリメータ・光電気変換部の性能向上を行う。 新年度予算で行うフリンジ回転補正と合わせ、相関振幅の信号対雑音比の向上が望め、高角度分解能干渉計の実現の可能性を探る。
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