2017 Fiscal Year Research-status Report
低温度星周りの生命居住可能惑星における光合成の実験的検証
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16K13791
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
日下部 展彦 国立天文台, 光赤外研究部, 特任専門員 (40647385)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 系外惑星 / 低温度星 / トランジット / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
低温度星周りの系外惑星における光合成について、生物学的な反応を考慮した上で、これまでとは異なる予測を成果としてまとめ、アストロバイオロジーならではの成果論文を発表した。この論文では、これまで主に可視光を使っている地球上の植物でも、長波長側にピークを持つ低温度星まわりの系外惑星においては、光合成のために使う光の波長も長波長側に移動すると予想されていた。そこで、光合成反応を起こすクロロフィルの光反応系を精査し、水の中で光合成生物が誕生することを仮定すると、水の赤外線に対する吸収と、少ない可視光でも光合成可能な反応系から、光環境がことなる系外惑星においても地球上の植物と同様の波長帯を光合成で利用する可能性を示唆することができた。 系外惑星探査においては、国内にて開発してきた四色同時撮像装置(MuSCAT2)が完成し、スペイン・テネリフェ島にあるカナリア天体物理観測所(IAC)の1.5m望遠鏡(TCS)に搭載が完了した。また、スペインの研究者と国際協定を結び、晴天率70%の天文好適地であるカナリア諸島に年間162夜の系外観測夜が系外惑星観測のために確保することができた。MuSCAT2は、太陽系外惑星の恒星面通過(トランジット)観測に特化した観測装置であり、四色で同時に観測するとこより、NASAなどの系外惑星探査衛星による系外惑星「候補」天体などを、確実に「系外惑星」か「偽検出」かを判別することができる。さらに、MuSCAT2による詳細な観測を進めると、系外惑星の大気について制限をつけることができる。これは、系外惑星環境に対する一つの大きなアプローチとなる。 これらの成果を、国立天文台を含む都内および基礎生物学研究所のある岡崎などで複数回行い、興味のある若手研究者との情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題にもなっている低温度星周りの光合成の可能性についての論文を一編発表することができた。系外惑星探査のための新装置も完成し、観測をスタートすることができた。分野融合型の研究として、若手の生物・化学分野の研究者との研究会も複数回行い、研究者同士の繋がりも異分野間において広がっている。研究成果や進捗状況、若手研究者の広がりから見ても、本研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
系外惑星の植物特性、光合成特性を予測する上で基礎となる地球上の光合成反応について、野外環境への適応を評価するため、地球上の様々な環境下に適応する多種多様な植物の光合成活動を評価するため、分光光度計を用いて野外測定試験を進める。 系外惑星探査においては、4月に打ち上がった系外惑星探査衛星(TESS)による系外惑星候補天体の確認のための観測をテネリフェのMuSCAT2で行い、それに合わせて系外惑星の大気についての制限を与え、低温度星周りの居住可能惑星の大気について制限を与える。 また、引き続き若手の分野間連携のためのワークショップなどを開催する。
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Causes of Carryover |
購入を検討していた計算機について、安価な計算機を買うのではなく、最終年度と合わせた予算でパワーのある計算機を購入しようとしたため。
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