2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13793
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
時安 敦史 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (40739471)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / ジョセフソン接合 / アクシオン / 実験核物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は近年提案された超電導素子による宇宙暗黒物質アクシオンの探索を行うことである。そのためにアクシオン探索に最適化されたジョセフソン接合素子を新規に開発し、その電流―電圧特性中にシャピローステップに似た構造を探索することによって100μeV程度の質量をもつアクシオンを探索する。 平成29年度は平成28年度の研究実績に引き続いて、新規に製作する超電導素子のデザイン(常伝導層の厚さ、信号増幅のための連結数など)の検討、また予想される信号の強度に最適な測定系の設計を行った。その上で一部測定に必要な機器(VMEバス経由で信号を受け取り、高速でデータストレージに転送する機器)を用意した。機器をテストするために簡易なテストベンチを構築してダミー信号を用いて、データ収集効率などの性能を評価した。 また超伝導検出器の専門家と複数回交流し、超電導素子を用いた基礎物理探索の意義について定期的に意見交換を行う会を設けることを決定した。その会中で関連研究者と超電導素子によるアクシオン探索の原理について検討した。具体的には信号が確認される条件、先行実験の信頼度、理論モデルの不確定事項などについて明らかにした。 また共同研究者により提供されたアクシオン探索実験用超電導素子の特性を計算によって求めた。その結果、提供された素子を用いれば、アクシオンの信号を既存の技術で測定できる程度の信号増幅機能がある旨を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定では当該年度中に測定器具をそろえて平成30年度に測定開始の予定であったが、現時点でまだ測定系が用意されていない。平成29年度のテスト測定の結果によって測定系のデザインを再考する必要がでてきたためである。 現在、測定系のパラメータ、装置の選定を行っている。現時点でまだ測定系が用意されていないが、特殊な装置を開発する必要はなく、選定後は比較的スムーズに測定環境を構築することができると予想し本研究の評価を「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度にSQUID微小電流測定システムを用いることを決定したが、予算、期間ともに研究期間内での遂行が難しいことが判明した。そこで今年度はロックインアンプを用いた微分的手法を用いて雑音低減を試みる。ノイズシールドの製作、各種パラメータ決定、測定装置の選定を平成30年度の早期におこなう。 また上記の測定手法を用いて共同研究者の協力により得られた新素子の測定を開始する。電流―電圧特性を測定し、先行実験で報告されたアクシオン由来の特徴的なピークが観測された場合は、ひきつづき長期にわたる測定を実施し、信号収量の季節変動、安定性などの確認を行う。特徴的なピークが観測されなかった場合は、素材を変更し、また層間距離を変更した新素子作成を行い、その測定を行う。 平成30年度に最終的な物理結果を国際学会で公表し、また学術論文としてまとめることを目標とする。
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Causes of Carryover |
平成29年度に行った素子のテスト測定結果を踏まえ、以下の通り測定手法を再考する必要が出てきた。電流ー電圧特性を通常の四端子法を用いて測定の予定であったが雑音レベルが想定以上に大きかったため微分的手法を用いて測定することに方針を転換した。現在、共同研究者とともに測定手法のデザインを作成中である。次年度にデザイン案を踏まえ再度、測定回路を購入及び、構築の予定である。 使用計画としては、次年度早期にデザイン(測定手法の考案及び各コンポーネントのパラメータ決定)を確定し、ノイズシールド、測定機器を購入する予定である。研究者との打ち合わせ四回分の旅費10万円、ノイズシールドの製作費20万円、測定機器の購入費10万円を次年度に使用する。 また上記理由により物理結果を出すための本実験が行えなかったために、結果を報告予定の国際学会で発表することができなかった。次年度以降、結果が出たのちに国際会議で発表を行う予定である。その際の旅費及び学会参加費として20万円を勘定する。
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