2016 Fiscal Year Research-status Report
リドベルグ原子直接光イオン化によるダークマターアクシオンの広域一括探索
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16K13805
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
舟橋 春彦 京都大学, 国際高等教育院, 教授 (00283581)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リドベルグ原子 / 直接光イオン化 / ダークマター / アクシオン / 電子検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず探索実験の前段階として、以下の項目の準備的な研究を実施した: 1)光イオン化により発生した電子を効率よく検出する為に、金属容器内に4個の電極を挿入して一様電場を構成し、光イオン化により発生した電子を上部に誘導する。この部分のシミュレーションを詳細に行い、出来る限り一様な電場で電子を誘導できる電極を設計した。また、金属容器を出た直後のフィールドイオン化部と電子の加速・検出部を設計し、シミュレーションを行って、最適なデザインを見出した。 2)以上の計算を基として、電極・イオン化領域、および加速部・その後の輸送系の部品を設計製作した。 3)製作したイオン化電子誘導部と加速・輸送部を組み立て銅の金属容器内に組み込んだ。 4)電子をタングステンフィラメントにより発生させその後20keVまで加速した電子の輸送を行いシンチレータ検出器で測定、その後信号を外部に導いて、実際に波高分布を測定した。 5)同時に、常温でバックグラウンドも測定し、信号対雑音比(S/N比)を調べた。一方、バンチ化された原子ビームをリドベルグ原子の生成に用いて光イオン化をパルス的に行うことで、時間情報も使うことが可能になり、バックグラウンドを大幅に落とすことが出来る。当初予想した計測時間よりも短い時間で探索実験が可能であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、常温でバックグラウンドを測った後に液体窒素温度以下の低温で、黒体輻射による光イオン化事象を測る計画であったが、その段階までは進んでいない。このような事態に至った原因は、元々装置を設置していた京都大学・低温物質科学研究センターが改組・廃局されることになり、従来の実験室が使えなくなった事情による点が大きい。現在は他の実験室を借用出来ることになり、実験を再開する状況になっている。一方、バンチ化原子ビーム装置の開発により、以前に予想していた以上の信号対雑音比が得られる目途が立っているので、この研究の遅れは、十分取り戻せるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
電子検出器の製作と開発は出来ており、低温での性能確認を行う段階になっている。一方、バンチ化装置の全体開発も進めつつあり、特に装置後半のレーザー圧縮部、回転ディスクによる速度・位置選別器は、もうすぐ製作が完了する予定である。パルス化した原子ビームを利用することで、時間情報の活用によるバックグラウンドの低減(環境放射能や、宇宙線によるバックグラウンドを落とす)は十分可能なので、より短い時間でのダークマターアクシオン探索が可能になると予想している。今後、約半年間でこれらの装置を組み立てて、低温でのバックグラウンドを測定し、本研究が目指す装置・機器の開発を完了したい。その上で、アクシオンの広域一括探索を進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画の遅れの理由を説明したように、実験室の移動で暫く実験を停止せざるを得ない状況になった。この為に、消耗品などの使用が滞り、研究資金の使用額が当初の予定に届かなかった。開発実験を再開しているので、今後は遅滞なく資金を実験に必要な消耗品などに使うことになると予想している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上に記したように、今後は遅滞なく資金を実験に必要な消耗品などに使うことになる。特に、寒剤の購入、光学系・真空系・測定系に関して消耗品を購入するのに使う予定である。また、一部は共同研究者(連携研究者)の京都大学までの旅費・交通費などにも使用する。
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