2016 Fiscal Year Research-status Report
単一電子イメージングを利用した静電場測定技術の原理実証
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16K13811
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
上野 一樹 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (20587464)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 粒子測定技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、真空中に取り出した単一電子イメージング技術の確立およびこれを利用した静電場測定手法の原理実証を行うというものである。紫外(UV)光を仕事関数の小さい標的に照射することで、光電効果によって低速電子を放出させ、その電子を二次元検出器(MCP)によってイメージングする。UV源および標的の選定を進め、さらにMCPにてエネルギー情報も捉えることによって単一電子イメージングを行う。この手法の最適化により、精度の高いイメージング技術の確立を行う。また、標的に導体を利用した場合、電圧を印加し、その値を変化させるとイメージングの取得レートが変化することがわかっており、この情報を複数の電子放出点で取得することで電場測定を試みる。 今年度は、真空チェンバの利用時期が限られていたため、新たに導入したマルチパッド読み出しを用いるMCPの信号読み出し系回路の試作を進めた。そして、その読み出し系の性能評価を進め、まずは真空チェンバを使用する必要のない光電子増倍管を利用した試験を行った。さらにその評価を進めるためにビーム試験等にも応用させ、十分使えそうであることがわかった。一方で、システムのコンパクト化のためのUVLEDの準備、および標的の選定を進めた。また、標的から放出した電子をMCPまで誘導するためのガイド電場ケージのデザインもはじめた。 完全な確立までは進められなかったが、上記を踏まえたMCPシステムの構築、標的絞込みを基に、系統的なスタディを進めることで、精度向上が見込まれる。 また、本研究内容については研究会にて発表を行い、議論を進めることができた。その結果、更なる応用の可能性も出てきたため、それについても検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
真空チェンバの構築を考えていたが、予算の都合上難しくなった。そこで、申請者の所属する機関にて代替品を見つけ、使える状態にはなったが、他への利用がメインのものであったため、使用期間が限られてしまい、当初の予定通りの進捗にはいたらなかった。しかし、その代替案としてMCPシステムの読み出し回路系の試作や、それを利用したスタディを進めることができ、また、UV照射標的から放出する電子の輸送用ガイド電場ケージのデザインもはじめることができた。さらに、本研究に関して研究会発表にて議論した結果、更なる応用可能性も出てきたため、その検討もはじめられるようになった。今後は上記を踏まえて効率的に研究を進められると考えられる。 以上のような問題が起こってしまったが、その対処として予定の方向転換を行い、進められる部分は進めることができた。しかし、研究計画全体としてはやや遅れている状況と考えられるため、この区分であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の進捗状況を基に、MCPシステムの構築、試験を進め、まずはこの新たなMCPシステムを用いた単一電子イメージングを行う。その結果を基に、UV光源や標的、放出電子のガイド電場等の系統的なスタディを進めることで精度向上を図る。さらに、可能であれば、UVLEDを実装する等の更なる改良を加え、コンパクト化を進める。また、電場測定のための準備を進め、原理実証を行う。電場シミュレーション等も行い、MCPゲインや電子ガイド電場、標的といった各種パラメタにおける系統的なスタディと合わせて定量的な評価まで行う。 上記の結果については、論文や学会発表にてまとめる。 MCPシステムの読み出し部に関して、現状では最低限のチャンネル数分のみ開発・評価を進めてきたので、今後は多チャンネル化まで考慮する。さらに、より精度をあげるために、ストリップ読み出しやピクセル読み出し法もアイデアとしては考えており、可能であればこれらも導入する予定である。 以上に加え、研究会の議論にて新たにわかった本研究の応用テーマについての検討も進め、その実現可能性について考える予定である。
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Causes of Carryover |
MCPシステム構築に必須である真空チェンバが一部の期間しか利用できなかったことから、MCPシステムに関する開発等を翌年度にまわすことにしたため。当初の予定では真空チェンバそのものも開発する予定であったが、それには足りない支給額だったため、方針を変更し、申請者の所属する機関にある代替品を併用することにした。当初の計画の代替案として、MCPそのものや読み出し系の試作、開発研究等にあてるよう変更し、検出器システムがより精度向上を図れるようにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定どおり、電場測定原理実証のためのシステムの構築に加え、方針変更に伴ったMCPシステム構築および読み出し系の構築にあてる予定である。また、UV光源や標的、放出電子輸送用ガイド電場の系統的なスタディのため、それらの選定、構築に使用する。一方、情報収集の際や、結果が得られた際には学会・研究会等に参加するため、その旅費等で使用する。さらに、論文化に関して投稿料等必要経費にあてる。
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