2017 Fiscal Year Annual Research Report
Observation of spinon spin currents
Project/Area Number |
16K13827
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩見 雄毅 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任講師 (10633969)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スピン液体 / スピン流 / スピノン / マヨラナ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に観測に成功したキタエフスピン液体候補物質RuCl3におけるスピン由来の熱伝導率に関する結果について、継続して研究を行った。投稿した論文の査読者から再現性についての質問があり、それに応える形で計5つの試料で追加実験を行い再現性を確認した。全ての試料において、キタエフ結合のエネルギースケールである100K付近で熱伝導率の異常を観測した。本研究で対象としたRuCl3は試料準備の過程で容易に欠陥(スタッキングフォールト)が入り物性に影響を与えることが知られているが、100K付近の熱伝導率異常の大きさは変化しなかった。熱伝導率の異常が試料内の欠陥の量と相関しないことから、スピン由来の信号であると結論した。仮にキタエフスピン液体で期待されるマヨラナ粒子に由来する熱伝導であると仮定すると、20nmほどの平均自由行程になり、Ru-Ru最近接長さよりも十分長いことから、長距離伝搬していることが示唆される。前年度までに報告した一次元量子スピン液体物質におけるスピノン・スピン流の実現に関する成果と上記キタエフ物質におけるスピン熱伝導の成果について、いくつかの研究会・学会において報告を行った。今後は、キタエフ量子スピン液体におけるスピン流物性について研究展開していく予定である。 その他、いくつかのスピン液体物質を試料提供により準備し、スピン流計測を行った。有意な信号を得ている物質試料もあり、理論家と結果について議論しつつ継続して実験研究を行っている。
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