2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13835
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 正行 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (90176363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 義明 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (60262846)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 励起子絶縁体 / 核磁気共鳴 / 核スピン格子緩和率 / ナイトシフト / ニッケル化合物 / スピン帯磁率 / 反磁性軌道帯磁率 / 層状物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
励起子絶縁体は、半導体や半金属において、バンドギャップより強いクーロン相互作用によって結合した電子ホール対(励起子)がボースアインシュタイン凝縮やBCS超伝導的な凝縮を起こすことによって現れる絶縁体である。この候補物質は、数が少なく、実験的研究はあまり進んでいなかったが、最近、その有力候補物質としてTa2NiSe5が報告され、興味を持たれている。本研究では、Ta2NiSe5で励起子絶縁体転移が起きているのか否かの検証を目指し、Ta2NiSe5の粉末試料と単結晶試料を作成して、核磁気共鳴(NMR)実験を行った。先ず、77Se核のNMRスペクトルから、高温斜方晶相と低温単斜晶相で、3つのSeサイトのナイトシフトテンソルを決定した。また、ナイトシフトの温度変化の測定から、励起子絶縁体転移が起きていると考えられる構造相転移温度で、ナイトシフトの温度変化が変わり、低温でスピン帯磁率の減少に伴う変化が観測された。帯磁率測定では、不純物による低温の増大によって、本質的な帯磁率がマスクされてしまうが、ナイトシフト測定では、不純物の影響を受けずにスピン帯磁率の温度変化を直接観測したことになる。さらに、核スピン格子緩和率の測定を行った結果、核スピン格子緩和率は、構造相転移温度の直下でコーヒレンスピークを示さず、低温単斜晶相で、熱活性型の温度変化を示すことを見出した。この結果は、励起子絶縁体転移についての理論研究で予測されている結果と整合しており、Ta2NiSe5で励起子絶縁体転移が起きている実験的証拠の1つであると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の通り、Ta2NiSe5の粉末試料と単結晶試料を作成でき、77Se核のNMR実験から、ナイトシフトと核スピン格子緩和率のデータを得ることができた。また、他の実験のために大型単結晶の育成にも取り組んだが、層状構造のため層間の結合が弱く、大型化は難しいことが分かった。一方、今後、計画している高圧NMR実験では、NMR信号が弱く実験が困難なことが予想されるが、このNMR信号のSN比を改善するために、77Seをエンリッチした粉末試料の合成にも成功した。このように、おおむね実験は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究はおおむね順調に進んでおり、今後の研究も、当初の目的に沿って推進する計画である。先ず、常圧下で得られたTa2NiSe5のNMRデータの解析を進め、励起子絶縁体転移に伴うスピン帯磁率と反磁性軌道帯磁率の温度変化について知見を得ることを目指す。また、高圧NMR実験を行い、高圧下の物性の解明を進める。さらに、別の励起子絶縁体候補物質として、TiSe2の実験も進める計画である。
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Research Products
(1 results)