2016 Fiscal Year Research-status Report
熱輻射制御による微小試料の高温熱伝導度測定法の開発と有機熱電材料への応用
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16K13840
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
吉野 治一 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (60295681)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熱伝導度 / 定常比較法 / 熱輻射 / 有機熱電材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規熱電材料の探索のために,有機伝導体などの長さ1 mm程度の微小試料の熱伝導度を測定するための新規な方法の開発を行っている.我々は試料と直列に参照試料(マンガニン)を接続し,ヒーターで発生した熱を両者に通すことで,マンガニンとの比較から試料の熱伝導度を決定する,定常比較法という方法で測定を行っている.この方法によれば,同時に電気伝導度と熱電能も決定できるため,単一の試料について無次元熱電性能指数ZTを決定することが可能となる.つまり,試料依存性の大きい物質についてZTを系統的に調べることができる. しかし,我々の従来の方法では,200 K以上の温度ではマンガニンと試料からそれぞれ熱輻射によって周囲に逃げる熱流量の差が大きく異なるため,試料の熱伝導度が高温ほど過大に観測されるという問題があった. これを解決するために,試料とマンガニンの周囲を輻射シールドで覆い,さらに輻射シールドに制御した温度勾配を発生させて,試料とマンガニンが周囲に逃げる熱を抑制することを試みた.初年度の実験としては,輻射シールド付き試料ホルダーを新たに設計し,作成した.シールドの温度勾配を積極的に制御する前の性能を調べるため,白金を試料とした測定を行った.室温近辺の高温の測定結果は,予想通り白金の文献値よりも高い値を示した.試料ホルダーの設計変更に伴い,試料から熱浴に熱を逃がすための経路が従来型の試料ホルダーと比較して長くなったため,低温の測定に困難が生じることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
改良型試料ホルダーの問題点が明らかになり,解決のため再設計が進展している.さらに,新しい試料ホルダーを用いた実験の結果,これまで見過ごされていた,定常比較法の問題点とその解決案も見つけることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
改良型の試料ホルダーとして,輻射シールドを付加しつつも,試料と熱浴の距離を短く保つように設計した試料ホルダーを制作中である.さらに,参照試料であるマンガニンと試料の熱流が一定でない条件であっても測定結果を補正するために,マンガニンで試料を挟んだ構造の測定を試みている.これにより,マンガニンと試料の熱流の非対称性が解消されると期待される.
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Causes of Carryover |
電圧の高精度測定のための装置が故障したため修理を依頼したが,故障が軽微であったため,修理費約20万円を支払う必要がなくなった.年度末に近かったため,繰り越して次年度の研究のために活用することにした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
真空蒸着装置を新たに作成するための材料費として転用し,有効活用する.
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