2016 Fiscal Year Research-status Report
鉄カルコゲナイド単結晶の層間制御によるチューナブル超伝導デバイスの創製
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16K13841
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
北野 晴久 青山学院大学, 理工学部, 教授 (00313164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鮎川 晋也 青山学院大学, 理工学部, 助教 (90625477)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 鉄カルコゲナイド / 電気化学 / イオンビーム / 固有ジョセフソン接合 / インターカレーション / 多バンド効果 / スピン軌道相互作用効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、単結晶試料へのイオンビーム加工と電気化学的手法の組み合わせにより、鉄カルコゲナイド層状超伝導体への可逆的な物性制御に挑戦するという基本アイデアの検証として、Fe(Se,Te)に含まれる過剰鉄の電気化学的除去(デインターカレーション)に取り組んだ。集束イオンビームを用いて微小ブリッジを作製したFe(Se,Te)単結晶に対して、イオン液体中で電圧を印加し、過剰鉄のデインターカレーション効果を調べた。昨年度の予備実験で判明したイオン液体による試料電極部の破損を回避するため、素子構造と電極作製方法を改良し、電気化学処理を系統的に行うためのモニター環境を整備した結果、デインターカレーションに伴う超伝導転移温度の向上に成功した。イオンビームによる微細加工を加えた試料は、バルク単結晶に比べて電気化学処理の反応時間を格段に短縮化できることも確認された。これは、従来困難と考えられてきた単結晶試料への電気化学的アプローチとして微細加工が非常に有効であることを実証する結果であり、大きな波及効果をもたらす結果として、現在、投稿論文の執筆準備中である。 次に、蒸気輸送法による高品質FeSe単結晶の作製に向け、高純度原料保管用のグローブボックスを購入し、石英管の封管作業に必要な配管を整備し、年明けから単結晶成長を開始した。現在までに2回成長を試みた結果、最大0.6ミリ角程度の微小結晶を得ることに成功した。現在、得られた結晶の諸特性を評価中である。さらに、固有ジョセフソン特性にも強く影響する超伝導層間の特性制御に向けて、Liインターカレーションの実験にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基本アイデアである、Fe(Se,Te)単結晶試料へのイオンビーム加工と電気化学的手法の組み合わせにより、従来困難と考えられてきた単結晶試料への電気化学的アプローチが実現できたこと、および蒸気輸送法によるFeSe単結晶の作製に初めて取り組み、微小サイズながらも年度内に単結晶試料が得られたことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果であるFe(Se,Te)単結晶の微細加工部分への電気化学的過剰鉄のデインターカレーション技術をさらに発展させて、現在、確認されている固有ジョセフソン接合的挙動に対して、電気化学的アプローチにより過剰鉄の影響を系統的に調べる。また、昨年度、準備が間に合わなかったマイクロ照射によるシャピロステップ観測実験にも取り組み、鉄カルコゲナイド層状超伝導体における固有ジョセフソン効果の有無について結論づけることを目指す。次に、当初予定していた粘着テープ剥離法だけでなく、電気化学的エッチング手法も組み合わせながら、Fe(Se,Te)単結晶の極薄膜作製に取り組む。同時に、従来の固有ジョセフソン接合型とは異なる面内型微小接合素子や電気二重層トランジスタ素子の作製にも着手し、フェルミ準位のゲート調整機能を有する新奇超伝導デバイスの提案、および多バンド効果やスピン軌道相互作用などに起因する新奇現象の探索を目指す。 FeSe単結晶の育成に関しては、昨年度の成果を下に結晶成長条件の最適化に取り組み、単結晶試料の大型化と高品質化を目指す。超伝導層間の特性制御に向けたLiインターカレーションにも引き続き取り組む。
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Causes of Carryover |
物品費は当初予算をオーバーしてしまったが、旅費など物品費以外は当初予算未満に抑制できたため、結果として2,148円の未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額が1万円未満のため、次年度使用額のうち物品費に合わせて必要な物品の購入に使用する。
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Research Products
(2 results)