2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13844
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川勝 年洋 東北大学, 理学研究科, 教授 (20214596)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 正幸 東北大学, 理学研究科, 教授 (60251485)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非平衡過程 / 複雑液体 / 散逸関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、強い非平衡条件下に置かれた複雑液体の構造相転移現象を、自由エネルギーとレーリーの散逸関数を用いた変分原理の形式で定式化することで、非平衡状態の安定性を定量的に議論できる枠組みを構築する。基礎理論としてはミクロな階層での弱い非平衡状態の線形応答理論に立脚しつつ、複雑液体の階層構造を利用してミクロスケールの情報をマクロスケールに連続的につなげることで、マクロなスケールでは非常に強い非平衡状態をも扱うことのできる定量的な枠組み(変分原理)を構築する。 この目的を達成するための具体例として、1)高分子溶融体あるいは高分子のミクロ相分離構造に外部から流動を印加した時に引き起こされる高分子鎖の変形と流動の動力学、および2)温度変化に伴う生体膜の変形と構造変化のプロセス、の2つの現象を分子モデルを用いたミクロな描像とメソスケールの粗視化された場の描像とを組み合わせるマルチスケールの手法を用いて定式化し、さらに数値的に解析した。1)高分子の流動挙動については、高分子メルトの壁面近傍での滑り現象における周期的な振動を、鎖の分子モデルを用いた管理論と流動場とをカップルさせたモデルを用いて定式化し、数値シミュレーションにより振動現象を再現することに成功した。2)界面活性剤膜については、膜の変形・分裂の過程を非平衡熱力学の方法およびオンサーガ―の散逸理論を用いて定式化するための基礎方程式の考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、2016年度に定式化を行い、2017年度に大規模シミュレーションで理論の検証を行う予定であったが、高分子系についてはすでにシミュレーションも実施しており、膜系に関しても定式化が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に進展しているので、現在の方針に従ってモデル化とシミュレーションの実施を進める。高分子粘弾性については、固体壁面近傍のずり流動による振動現象の解析と、ミクロ相分離構造を有する系の粘弾性挙動について、分子モデルを用いた記述(粗視化分子シミュレーションおよび経路積分表示)と流動場の記述をカップルさせたマルチスケール手法を用いたシミュレーションスキームを完成させる。膜系に関しては、温度を変化させたときの自由エネルギーランドスケープの定式化を完成させ、シミュレーションと実験との比較を行う。
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Causes of Carryover |
本研究課題の初年度であるH28年度には、当初理論モデルの初期検証のためにワークステーションの購入(予算額718,000円)を予定していたが、理論の定式化の結果として予想以上に計算量の低減が図れたために、大規模計算を実施するH29年度まで購入を延期した。また、資料収集の目的で雇用を予定していた学生アルバイト(H28年度は予算額282,000円の半分程度)も予定人員を調達できず、研究代表者および分担者が資料収集を行ったために、予算に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度には、H28年度に購入を見送ったワークステーションの同等品を購入し、学生アルバイトを用いてシミュレーションを実施する。
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Research Products
(2 results)