2016 Fiscal Year Research-status Report
液晶におけるトポロジカル欠陥の実空間可視化プロトコルの確立
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16K13862
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉田 浩之 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80550045)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液晶 / トポロジカル欠陥 / 透過型電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では液晶中に生成する配向の特異点であるトポロジカル欠陥を実空間・高分解能で観察することを目指している。通常の液晶材料は流動性をもつため、光学顕微鏡による観察に限られるが、ここでは光重合した液晶フィルムが電子顕微鏡下で観察できることを利用し、電子顕微鏡を用いた実空間・高分解能観察に取り組む。トポロジカル欠陥とバルクの液晶分子を差別化するため、液晶状態においてトポロジカル欠陥のみ染色し、その後、全体をフィルム化することで、欠陥部のみを観察することを目指している。 本研究では透過電子顕微鏡下でコントラストを生じさせるため、分子内に原子量の大きい元素を付与した光重合性メソゲンを合成した。これを非重合性の液晶とカイラルドーパントの複合材料に混合したところ、自発的にトポロジカル欠陥の周期的ネットワークを形成するコレステリックブルー相が発現することが確認された。この試料をベースとして全体が重合したフィルムを作製し、透過電子顕微鏡による観察を行った。この他にも、目的達成に向けた試料の調整を行っており、特定の条件ではコレステリックブルー相が発現することを確認している。 また、透過電子顕微鏡による試料の観察結果を正しく解析するために、コレステリックブルー相液晶の配向処理手法について検討した。試料を作製するための基板の配向膜および温度制御法を改善することにより、基板垂直方向にコレステリックブルー相結晶の[100]あるいは[110]軸を精度よく配向させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では透過電子顕微鏡下でコントラストを生じさせるため、分子内に原子量の大きい元素を付与した光重合性メソゲンを合成した。これを非重合性の液晶とカイラルドーパントの複合材料に混合したところ、自発的にトポロジカル欠陥の周期的ネットワークを形成するコレステリックブルー相が発現することが確認された。この試料をベースとして全体が重合したフィルムを作製し、透過電子顕微鏡による観察を行った。合成した光重合性メソゲンは液晶試料との相溶性があまり高くなく、混合状態を保つには一定の温度条件を保つ必要があるなどの課題があるが、混合比の工夫などによって改善すると予想している。 この他にも、目的達成に向けた試料の調整を行っており、特定の条件ではコレステリックブルー相が発現することを確認している。加えて、電子顕微鏡観察結果をただいしく解析するため、コレステリックブルー相液晶の配向を制御する技術も開発している。 以上のことから、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
原子量の大きい元素を付与した光重合性メソゲンの分子構造や添加濃度を工夫し、安定的にコレステリックブルー相液晶を発現する試料を調整する。その試料を用いて全体が重合したフィルムを作製し、透過電子顕微鏡によって観察する。試料の点か濃度や配向処理を適切に選択することによって、コレステリックブルー相液晶中のトポロジカル欠陥に原子量の大きい元素が濃縮し、電子顕微鏡のコントラストとして観察されることが期待される。 一方、基板の配向処理を通してトポロジカル欠陥を人為的に形成する技術も採用する。コレステリックブルー相における欠陥線ネットワークは200nm程度と小さい周期をもって密集しているが、液晶を保持する基板界面の配向処理を通して欠陥線を形成することで、数本のディスクリートな欠陥線を導入することができる。コレステリックブルー相と平行してこの系の実験をすすめ、提案手法による液晶におけるトポロジカル欠陥の実空間観察プロトコルの確立を目指す。
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Causes of Carryover |
元々「謝金」として\50,000を計上していたが、当該年度に謝金の支出はなく、また「その他」の費用も実際の支出は計上した\100,000より少なった。 一方で、研究をすすめた結果、原子量の大きい元素を付与した光重合性メソゲンの分子構造や調整する混合液晶試料について、より詳細な検討が必要と判断した。したがって、当該年度における研究費の残額は次年度に透過電子顕微鏡観察に適した資料を調整するための消耗品を購入する費用として使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
透過電子顕微鏡観察に適した液晶試料を調整するためのガラス器具、基板および試薬の購入に充てる。
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Research Products
(5 results)