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2018 Fiscal Year Research-status Report

長周期火山性振動を解明するための新たなアプローチ

Research Project

Project/Area Number 16K13872
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

武尾 実  東京大学, 地震研究所, 教授 (00197279)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords火山 / 数理物理 / 固体地球物理
Outline of Annual Research Achievements

本研究では,励起源近傍での観測データに非線形動力学や位相幾何学的なアプローチを適用して,その励起源の力学機構の数理構造を推定する手法を開発し,他の多項目観測と併せることで,長周期火山性振動の火山活動における役割が明らかにする.2018年度は,2011年の霧島山新燃岳噴火で発生したハーモニックな微動に非線形動力学的手法による解析を適用し,それらが非線形システムによるリミットサイクルに起因することを明らかにした.また,既存の非線形微動モデルを拡張することより倍周期分岐の現象を再現できることも示した.これらの成果を纏め,欧文学術誌に公表した. 2016年度から2018年度の期間で実施した「遠隔操作の多項目観測による西之島形成プロセスの解明(基盤研究(A))」において,新たに誕生した西之島の火口近傍に設置した広帯域地震観測により,2017年4月18日の再噴火の溶岩流出に先行して,相似な波形を持つ長周期地震群と周期1.5~1時間の鋸波状の傾斜変動が発生していることを明らかにした.この現象は2011年及び2018年の霧島新燃岳噴火で記録された長周期地震や傾斜変動に対応するものであり,これらのデータも含めて新たなアプローチの開発に取り組む必要性が生じた.また,2011年霧島新燃岳噴火のハーモニックな微動について,火道浅部で想定される流体制御の機構を組み込んだ数理モデルにより,供給源における圧力を変化させるだけで,観測された微動の相図上の軌道の時間変化を再現することに成功した.浅間山の非線形微動の検討では,2004年9月1日の噴火に至るまでの火山ガス噴出イベントの推移と地震活動・非線形微動活動の整理を進め,これらの非線形微動が火道浅部における火道の閉塞状況を示唆している可能性があることを明らかにし,数理モデルから物理モデルに発展させる上での手がかりを得ることが出来た.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究計画では,1)振動の位相幾何学的分類,2)相図による局所的な数理構造の解明,3)観測量に基づく制御因子の定量化への着手,を柱として研究を進めてきた.1)の課題では,2011年の霧島新燃岳の微動データを解析して,ハーモニックな微動に現れる倍周期分岐とその非線形動力学的な特徴を明らかにし,欧文学術誌にその成果を公表した.2)の課題では,これまで2011年の霧島新燃岳噴火に伴うマグマ湧出期の鋸波状の傾斜変動について,その相図を分析することにより,単純な構造を持つ数理モデルを構築してきた.それに加えて,新たに西之島の2017年4月18日のマグマ湧出噴火に先行する傾斜変動データと2018年3月に再開した霧島山新燃岳噴火での一連の噴火活動の際の傾斜変動データを加えることにより,異なる条件下での局所的な数理構造の検討も開始した.また,2011年の霧島新燃岳のハーモニックな微動については,観測された相図上の軌道の時間変化を再現できる数理モデルの構築に成功した.3)の課題に関連する情報を得るためには,非線形微動の火山活動における位置づけをより明確にする必要がある.これまで浅間山において,2007年10月~2018年1月に亘る約10年間の火山ガス噴出イベントの推移と地震活動・非線形微動活動を整理し,その特徴を明らかにしてきた.それに加えて,2003年10月から2004年9月1日の噴火に至るまでの同様のデータを整理し,非線形微動が火道浅部における閉塞状態を示唆している可能性のある事を明らかにした.以上を纏めると,全体としては,ほぼ,当初の計画通り順調に進捗しているといえるが,新たに2017年4月の西之島噴火におけるデータを加えることで,より広範に適用可能なアプローチと数理モデルの開発を進める.

Strategy for Future Research Activity

2019年度は先ず,2018年度における2)相図による局所的な数理構造解明の課題への取り組みにより,2011年霧島火山新燃岳噴火の湧出期からブルカノ式噴火期にかけて観測されたハーモニックな火山性微動の相図上の軌道時間変化を再現する事に成功した局所的数理モデルについて,その非線形力学的な特徴を解明する.この数理モデルは,2004年浅間山噴火前に発生した非線形な火山性微動について構成した局所的数理モデルとは異なる構造を持っているので,様々な自励振動を引き起こす発振回路との類似に注目して,この両者の比較検討を進め,これらの数理構造を発振回路の基本である【時定数回路】,【振幅安定回路】,【制御因子回路】の3つに分類して整理する.また,2011年霧島火山新燃岳噴火の際に観測されたマグマ湧出期の傾斜変動,2018年3月の霧島山新燃岳噴火の際に観測された傾斜変動,微動データ,及び2017年4月の西之島再噴火での溶岩流流出に先行して観測された傾斜変動,長周期地震の分析も加え,既に蓄積された相図上の様々な軌道の特徴について整理・分類し,それが現れる象限に対応した数理構造の分類も進め,より広範に適用可能なアプローチと数理モデルの開発を目指す.また,昨年度から引き続き,傾斜変動・微動活動と他の火山活動を示す観測データとの対比をさらに進め,より具体的な物理プロセスの推定に基づいて,制御因子の定量化を図る.さらに,今年度は最終年度となるので,最終的な研究成果の取り纏めを行う.

Causes of Carryover

本研究課題で対象としている長周期火山性振動について,2016年度から2018年度の期間で実施した「遠隔操作の多項目観測による西之島形成プロセスの解明(基盤研究(A))」において,新たな長周期火山性振動の観測データを取得することができた.そのため,これらのデータも解析対象に含めて新たなアプローチの開発に取り組むため,補助事業の期間を1年延長する事が認められた.2019年度は本研究課題の成果を公表して適切な議論が出来る国際学会や国際ワークショップの開催が見込まれるため,旅費の支出を予定している.また,研究課題3「観測データを定量的に再現するための方程式系の制御因子の定量化と,物理モデルの構築」を進めるためには,計算機の能力を高めるための物品(増設メモリ,ハードディスク等)やデータ解析用ソフト等が新たに必要となるため,主にその経費に充てる.さらに,研究成果公表のための論文投稿料なども予定している.

  • Research Products

    (2 results)

All 2018

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] A non-linear time-series analysis of the harmonic tremor observed at Shinmoedake volcano, Japan2018

    • Author(s)
      Natsume Yuki、Ichihara Mie、Takeo Minoru
    • Journal Title

      Geophysical Journal International

      Volume: 216 Pages: 1768~1784

    • DOI

      10.1093/gji/ggy522

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] A Nonlinear Time Series Analysis of the Harmonic Tremor Observed at Shinmoedake Volcano, Japan2018

    • Author(s)
      ナツメユウキ,市原美恵,武尾 実
    • Organizer
      日本火山学会2018年度秋季大会

URL: 

Published: 2019-12-27  

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