2017 Fiscal Year Research-status Report
直交格子積み上げ法によって格子形成した雲解像モデルの開発
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16K13881
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
重 尚一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60344264)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 雲解像度モデル / 直交格子積み上げ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「直交格子積み上げ法」(Nakahashi 2003)によって水平解像度が地面付近で高く、上空ほど粗い格子構造を持つ雲解像モデルを開発し、開発したモデルを熱帯陸上対流の再現実験に適用し、雲の発達特性の再現に必要十分かつ飛躍的に高い計算効率を持つ格子構造を導き出し、その先進性・有用性を示すことである。 本年度は、昨年度、新規に開発した温位を予報変数とする水平解像度が鉛直一定の二次元非静力学大気モデルに、雲微物理過程のKesslerスキーム(Kessler 1969)を導入した。これは降水過程を水蒸気、雲粒、雨滴などの固体を含まない暖かい雨で表現するものである。雲粒や雨滴の混合比は正の値であるため、数値計算の際に負の値にならないように正定値フィルター(Smolarkiewicz 1989)の導入も同時に行った。正定値フィルターではセルから流出するフラックスがセル内の水物質の質量を上回る場合にフラックスを制限する。導入した雲微物理過程の検証実験として、現在世界で最も利用されている雲解像モデルWeather Research and Forecasting Model(WRF; https://www.mmm.ucar.edu/weather-research-and-forecasting-model)のテスト実験として公開されている理想化した線状降水帯の数値実験を行った。この実験では初期条件として下層に風速のシアーを持つ湿った大気に暖気塊を配置し、降水帯を再現する。実験の結果、既存のモデルと定性的に一致した結果がえられ、雲微物理過程の導入に成功したことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
雲微物理過程の導入が容易な温位を予報変数とする支配方程式の非静力学大気モデルを新規開発したため、当初の予定より、遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに開発した水平解像度が鉛直一定の二次元非静力学大気モデルに実装した雲微物理過程の定量的検証のため、Shige and Satomura (2000)で示されている発達する対流セルに伴う潜熱加熱鉛直分布の時間変化と比較する。検証後、「直交格子積み上げ法」を導入して、水平解像度の異なる上層・下層の2層で動作を確認し、次に上層・中層・下層の3層へと多層化する。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初、既存のモデルに雲微物理過程を導入して数値実験を開始する予定であったが、新たにモデルを一から開始することになったため、数値実験に必要な諸経費が次年度に必要となったため。 (使用計画) 数値実験に必要な計算機ならびに、そのデータの保管に必要な大容量ハードディスクを購入する。
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