2017 Fiscal Year Research-status Report
沿岸域における海表面塩分マッピングのための海色衛星データ同化手法の開発
Project/Area Number |
16K13882
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中田 聡史 神戸大学, 海事科学研究科, 特命助教 (70540871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 志保 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (60432340)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | データ同化 / 有色溶存有機物 / 河川プリューム / 静止海色衛星 / 海表面塩分 / 大阪湾 / 瀬戸内海 / グリーン関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
外洋の海表面塩分(SSS)を測定するセンサーを沿岸域で使用するには水平分解能が粗く(例えばAQUARIUSの水平分解能は約50km)、センサーの観測エラーも大きい。そこで本研究ではSSSと有色溶存有機物(CDOM)が高い相関関係にあることに着目し、世界初の静止海色衛星「千里眼」(COMS/GOCI)から得られる時空間的に高解像度の高いCDOMプロダクトを利用し、水平解像度500mのSSSマップを作成している。昨年度よりSSSマップ作成領域を大阪湾から瀬戸内海全域に拡張し、毎時の海表面塩分(SSS)マップの開発を継続し、当該年度では、諸研究機関からご提供いただいた現場塩分・CDOMデータを使用してSSS推定精度を向上させ、現場塩分データを用いて精度を評価した。 しかし、COMS/GOCIは夜間や雲被覆が高い場合には欠測となり、必ずしも毎時データが連続的に得られるわけではない。そこでデータ同化手法によるSSSマップの補完が必要となる。当該年度は、昨年度まで開発・改修された非構造格子海洋モデルFVCOM(Finite-Volume, primitive equation Community Ocean Model)と陸面水文モデルHaRUM(Hydrometeorological and multi-Runoff Utility Model)を結合した陸海統合モデルを使用して6カ月間の長期計算実験を実施し、統合モデルによるシミュレーション結果の再現性を検証した。まず、海表面塩分場だけでなく、潮海流、水温・塩分鉛直プロファイル等の再現性にも着目した詳細な調査を実施し、これらの物理プロパティの再現がある程度できていることを確認した。グリーン関数法を用いたSSSデータ同化モデルの開発を継続し、適切な同化インターバルを評価するための同化実験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(H29-1) 大阪湾を含む瀬戸内海全域における高解像度SSS推定マップの作成 COMS/GOCIから得られる高い時空間解像度(水平解像度500m、1日8回)の毎時のCOMS/GOCI標準プロダクトから、約7年分(2011~2017年)のSSSマップの作成が完了した。SSSマップの推定精度を向上させるため、瀬戸内海全域における現場CDOMデータおよび現場表層塩分時系列データを、諸研究機関からご提供いただきデータベース化した。その結果、備讃瀬戸や燧灘において過小評価されていたSSSの推定精度が大幅に向上した。これは、本研究により確立されたCDOMからSSSを推定する手法は汎用性が高い可能性を示唆するものである。 (H29-2) 海洋シミュレーション再現性の検証およびSSSデータ同化実験 昨年度までに開発した、陸面水文モデルHaRUMと海洋モデルFVCOMを結合した陸海統合モデルによるシミュレーション結果の再現性を検証するため、まず、潮海流、水温や塩分の再現性がどの程度なのかを確認した。その結果、既往研究で記述されている沖ノ瀬還流や西宮還流などの流動場、水温・塩分躍層、海表面水温・塩分といった物理プロパティの再現が、ある程度できていることが確認された。特に台風時などの洪水出水後の河川プリュームの形状や面積の再現が確認できており、データ同化に資するためのモデルパラメータがある程度正しいことがわかった。これらのデータ・パラメータセットを用いて、シミュレーションの再現予測誤差を定量的に計算し、SSSデータ同化モデルを用いて同化実験を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
(H30-1):大阪湾の再解析SSSマップと瀬戸内海全域のSSSマップの作成 前年度作業(H29-1)にて、現場SSS推定精度が向上したSSSマップを陸海統合モデルに同化させ、2011年から6年分の再解析SSSデータセットを下記の手順で整備する。同化方法には、グリーン関数法を採用して、陸海統合モデルの物理パラメータ(例えば、渦鉛直拡散係数等)および流入河川流量を修正する。まず、欠測の少ない良好なSSS推定マップを客観空間補間してモデル初期値とし、様々な同化インターバル(1時間~1週間)を設定して同化計算を実施。最も再現性の良い計算結果の物理パラメータを採用し、同化期間における再解析SSSデータを作成する。同化インターバル最後の再解析SSSマップを初期値として、これらの実験手順を繰り返すことにより適切な同化インターバルを決定し、欠測が無い信頼性の高い1時間毎の再解析SSSマップを作成していく。 (H30-2):現場観測データの収集 衛星観測プロダクトを用いて整備された推定SSSデータ以外にも、大阪湾には海洋観測インフラ(HFレーダ、検潮所、13基の水質定点自動観測塔等)が充実しており、毎時の各種観測データ(水温、塩分、潮位、流速)を収集し、これら全データを同化実験結果の検証データとして用いると共に、同化データとしても用いる。同時に、衛星CDOMからSSSへの変換式の精度が再解析値の精度に与える影響やその季節性・経年変化を調査するため、現場CDOMデータと塩分データの収集を継続して実施する。また、昨年度から開始した現場表層塩分の時系列データを諸研究機関のご協力により収集すると共に、本手法が適用可能な海域をさらに模索するため、瀬戸内海以外の海域においても現場塩分やCDOMデータの収集を継続する。
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Research Products
(9 results)