2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13883
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
広瀬 直毅 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70335983)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 海底地形 / 黄海 / 浅水波モデル / モデルグリーン関数 / 対馬海峡 / 対馬暖流 |
Outline of Annual Research Achievements |
黄海海域において、SKKU,GEBCO,ETOPO1の各水深データセット間には有意な水深差が確認された。特に中国大陸沿岸においては、データ間で平均水深が10mにもおよぶ大きな差があった。 モデルグリーン関数を用いることで、黄海の平均水深は44.9~45.7m程度の狭い範囲で推定することに成功した。その結果は、主要分潮(M2やK1)の再現性向上によって正当化される。分潮別の最適化では推定結果が過大評価となる傾向があったが、多変量の同時最適化によって、適切な推定結果を得ることができた。結果的に黄海において、全体的にSKKUは深め、GEBCOとETOPO1は浅めの海底地形データであるといえる。 一方、沿岸潮位計データを拘束条件として用いた場合の水深スケールの推定結果は不安定であった。有限差分の数値モデルでは、沿岸付近の大きな潮汐変動を再現することが困難であったためと考えられる。したがって、潮汐モデルを用いて海底地形データを逆推定する場合は、比較的潮汐変動が表現しやすい沖合データ(衛星高度計データ)を用いることが望ましいといえる。 さらに、対馬海峡の3次元高分解能モデル(東西1分×南北0.8分)を作成し、種々の海底地形データセットを比較的に利用した。対馬海峡北部(韓国沿岸)では、韓国海洋開発(株)の電子海図データを利用することによって、より正確な格子化地形データを作成することができた。この最新データと比較することによって、従来のほとんどの地形データセットにおいて、戦前の不正確な測深データの影響が見出された。この違いは西水道を通過する対馬暖流の再現性に直結する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特段の問題は発生していない。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究成果をとりまとめ、学術論文として報告する傍ら、モデルグリーン関数および適応カルマンフィルターを用いた逆推定アルゴリズムを作成する。最終的に本研究で制御される海底地形の分解能はモデル格子の3倍(1/4度×1/5度)、つまり数値モデルや衛星観測データの実質的な解像度と同等となることを目指す。ただし、前年度に特定した低感度の区域は、制御変数から除外する。数値モデルの分解能よりも制御変数の自由度を節約する縮小近似法としては、Hirose et al. (1997)やHirose et al. (2001)などで実績のある浅水波モデル用の近似カルマンフィルターを採用する。本来は時間的に不変の海底地形を状態変数に組み込む(適応する)ことで、水深の逆推定が可能となる。グリーン関数法はMoon et al. (2012)の手法を100程度までの自由度に拡張して構築する。先験的に必要となる海底地形の誤差共分散特性は、各データセット間の残差分散に基づいて決定する。なお、制御変数の自由度が100程度ならば、グリーン関数法による同化計算も可能だが、本件では数十kmメッシュで海底地形を逆推定するため、自由度が10000程度の規模の逆問題となり、グリーン関数法では計算コストが過大となる恐れがある。両手法の特性を考慮し、グリーン関数法で大規模(数百km)、近似適応カルマンフィルターで小規模(数十km)の海底地形を逆推定するハイブリッドなデータ同化手法を検討する。初年度にセットアップした高性能Linux PCを利用して、このデータ同化実験を行う。同化実験の実行状況確認や計算結果の可視化など、補助的作業を大学院生が担う。
|
Causes of Carryover |
平成29年度の配分額が、申請予算額と比較して797千円(約47%)の減額となり、大型計算機の利用が困難となる恐れがあったため、平成28年度の外国出張を取りやめて、次年度に繰り越すこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り、平成29年度には大型計算機を利用してハイブリッドデータ同化計算を実行する。
|
Research Products
(5 results)