2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K13883
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
広瀬 直毅 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70335983)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海底地形 / 浅水波モデル / モデルグリーン関数 / 対馬海峡 / 対馬暖流 |
Outline of Annual Research Achievements |
海峡内外の海況変化は外的条件に左右されやすいので、モデルグリーン関数で調節すべきパラメータとして12種類の海面と側面の境界条件(バルク係数,降水量,複数の再解析データセット組み合わせ,等)を選択した。グリーン関数によって、直接的にこうした経験的パラメーターを最適化することができるが(例えばMenemenlis et al., 2005)、パラメーター数に比例して計算量が増大する宿命にある。そこで今年度は、感度実験の結果を再利用(リサイクル)するグリーン関数の近似方法を考案した。大容量化の進んでいるハードディスクに潮汐や季節変化など周期的に発生する現象の計算結果を保存しておき、再利用する。異なる時刻での観測値との対応は正確に計測し、応答行列(グリーン関数行列)はなるべく正確に作成する。実際に1.5kmメッシュ対馬海峡モデルにこの近似法を適用したところ、冬季のモデル結果は大きく改善したが、夏季の改善率は小さかった。冬季には境界条件と水温・塩分分布がかなり線形的な関係にあるが、夏季は乱流変動が活発で非線形性も強いためであろう。海底地形の逆推定についても、冬季の海況を念頭に実施すべきと考察された。Hirose (2005)の状況設定が適切であったと正当化することも可能である。 周期境界条件を課した単純な水路の2次元浅水波モデルを用いて、凹凸地形に対する海流の応答を数値実験した。対馬海峡を想定した順圧モデルの場合、海山・海盆のスケール(1~10km程度)に応じて、海流の蛇行度が大きく異なることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特段の問題は発生していない。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究成果をとりまとめ、学術論文として報告する。モデルグリーン関数および適応カルマンフィルターを用いて、大型計算機において海底地形の逆推定を実現する。前年度の成果より、冬季の海況を実験対象とし、制御可能な海底地形の空間スケールとして10km以内まで高分解能化する。数値モデルの分解能よりも制御変数の自由度を節約する縮小近似法としては、Hirose et al. (1997)やHirose et al. (2001)などで実績のある浅水波モデル用の近似カルマンフィルターを採用する。本来は時間的に不変の海底地形を状態変数に組み込む(適応する)ことで、水深の逆推定が可能となる。グリーン関数法はMoon et al. (2012)の手法を100程度までの自由度に拡張して構築する。先験的に必要となる海底地形の誤差共分散特性は、各データセット間の残差分散に基づいて決定する。なお、制御変数の自由度が100程度ならば、グリーン関数法による同化計算も可能だが、本件では10km以内のメッシュで海底地形を逆推定するため、自由度が10^5程度の規模の 逆問題となり、グリーン関数法では計算コストが過大となる恐れがある。両手法の特性を考慮し、グリーン関数法で大規模(数百km)、近似適応カルマンフィルターで小規模(十km以下)の海底地形を逆推定するハイブリッドなデータ同化手法を導入する。初年度にセットアップした高性能Linux PCを利用して、このデータ同化実験を行う。同化実験の実行状況確認や計算結果の可視化など、補助的作業を大学院生が担う。
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Research Products
(12 results)