2016 Fiscal Year Research-status Report
惑星超高層大気リモートセンシングへの応用を目指した無電極吸収・発光セル法の開発
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16K13887
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
田口 真 立教大学, 理学部, 教授 (70236404)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 惑星コロナ |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度までに製作した新型ガラス吸収セルの吸収性能評価のため、フランス・パリの郊外にあるSOLEILの放射光施設で実験を行った。SOLEILでは真空紫外領域の強力なシンクロトロン放射光及び世界最高性能のマイケルソン干渉系型分光器DESIRSが利用できる。水素吸収セルのライマンα吸収線の吸収プロファイルを測定できるのは、世界中でこの施設のみである。水素ガス密度、フィラメント電力、フィラメント仕様(径、長さ)のパラメータについて、吸収性能を評価した。その結果、ガス密度は2~3 hPa、フィラメント電力は3 Wで十分、フィラメント径は細いほど吸収が強いということがわかった。フィラメント系を細くすると寿命が短くなると予想される。吸収強度とフィラメント寿命の兼ね合いは今後の課題である。吸収セル開口部の中でのビーム位置による吸収プロファイル変化については、自動ステージの動作不良のため測定できなかった。また、約20年前に製作された火星探査機「のぞみ」搭載紫外撮像分光計用の予備重水素吸収セルの吸収プロファイルを再測定した。その結果、吸収量は20年前の約1/3となっていることがわかった。吸収セルを製作してから数年のうちに観測を実施すれば、経年変化は観測には問題ないレベルであることがわかった。ただし、惑星水素コロナ温度の測定には精密な吸収プロファイルを知る必要があり、経年変化を考慮する必要がある。研究成果は学会や研究会で発表され、論文投稿を準備中である。なお、研究協力者の桑原正輝(東大院)が地球電磁気・地球惑星圏学会での研究発表を行い、学生最優秀発表賞(オーロラメダル)を授与された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型吸収セルの吸収性能に関する評価結果から、新たな知見が得られ、今後の吸収セル開発の方向性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
従来のフィラメントによる吸収性能の長期安定性と精密校正の方法を研究する。一方、新手法として、マイクロウェーブによる分子解離や励起の方法を研究する。今年度は国内で可能な実験でこれらを遂行し、来年度に再びSOLEILを利用する申請をする。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通り使用した。繰り越し額は少額であるので、次年度予算と合わせて使用する方が有効利用できると判断したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
フィラメントや真空実験用材料等の消耗品の購入にあてる。
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