2017 Fiscal Year Research-status Report
惑星超高層大気リモートセンシングへの応用を目指した無電極吸収・発光セル法の開発
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16K13887
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
田口 真 立教大学, 理学部, 教授 (70236404)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 惑星コロナ / 大気散逸 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は吸収セルサイズとフィラメント仕様の最適化を行った。その結果、フィラメントは細いほど吸収効率が高いことがわかった。しかし、フィラメントが細いほど使用中に切れやすいと予想される。そこで、2017年度は、フィラメントの効率と寿命のトレードオフのため、フィラメントの耐久性を確認する実験を行った。2種類のフィラメントを5本ずつ、合計10本を試験台に並べ、ステンレス製真空槽の中に設置した。真空槽内にはパラジウムフィルターで不純物ガスを取り除いた水素ガスを吸収セルと同じ圧力で充填した。真空槽外部の安定化直流電源から定電圧で電力を供給した。供給する電圧と電流をレコーダーで計測した。結果として、フィラメントは予想よりも遙かに短い時間で切れてしまった。ガラスとMgF2でできた吸収セル内にフィラメントがある状態とステンレス製フィラメント耐久試験装置内にフィラメントがある状態で内壁の状態や充填する水素ガス容積等の環境条件の違いがあり、正確な耐久性の試験ができないことがわかった。 2016年度の実験で光路長が100 mmのセルと60 mmのセルで吸収量に差がなかった。そこで光路長を更に短く40 mmにした吸収セルを試作した。これが現在の技術で可能な最も短い光路長のセルである。 2018年6月にフランスのSynchrotron SOLEILにおいて吸収セル実験を行うための申請をした。40 mm光路長新型セルの吸収特性の測定、吸収量の吸収セル内を通過するビーム位置依存性の測定を実験課題として実験計画を立てた。 水素分子の解離の素過程について専門家を含めて理論的に考察した。マイクロ波放電による解離の手法は実験室内では取り入れられている事例がある。搭載用に小型軽量化可能か検討している。 2016年度の実験結果をとりまとめ、Kuwabara et al.[2018]として査読付き論文に上梓した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の熱解離型水素吸収セルの高効率化に関しては一定の成果があり、論文にまとめることができた。フィラメントによる水素分子の熱解離はフィラメントの形状への依存性などまだ工夫の余地があり、その方向で改善を図っている。また、フィラメントの寿命が課題である。一方でマイクロ波放電による解離方法は小型軽量化へのハードルが高い。引き続き実現へ向けて時間をかけて検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の熱解離型水素吸収セルに関しては効率を極限まで追い求めた完成形を最後の1年間で確立する。2018年5月~6月にフランスのSynchrotron SOLEILにおいて、2回目の吸収セル性能評価実験を行う。そこでは、40 mm光路長新型セルの評価と吸収の位置依存性を測定する。実験結果を踏まえて、具体的な惑星探査ミッションを想定し、搭載センサーの部品の一部として耐環境性を考慮した吸収セルを完成させる。一方で、無電極吸収セルに関しては引き続き理論的に実現性を検討し、可能性を検証するための基礎実験を実施する。
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Causes of Carryover |
吸収セル試作に必ず必要なMgF2基板は1枚50,000円(税別)で、これを1枚購入するには少し足りなかった。他に年度末に緊急に必要な消耗品等はなかった。そこで翌年度に繰り越すこととした。繰越金は消耗品等の物品費として使用し、2018年度請求分については当初の予定通り消耗品及び成果発表等のための旅費にあてる。
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