2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13899
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Research Institution | Ashiya University |
Principal Investigator |
桑原 希世子 芦屋大学, 臨床教育学部, 講師 (20507131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 弘好 九州大学, 理学研究院, 教授 (80136423)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放散虫化石 / チャート / 混合群集 |
Outline of Annual Research Achievements |
層状チャートに含まれる放散虫化石には,既知の生存期間を超えて産するものがある.これを生存期間が延びたと考えるか,再堆積・上位層への混入とするか,難しい問題である.本課題では,西南日本美濃帯の上部ペルム系層状チャートを対象に,堆積構造と化石産出状況を精査する. 野外調査は滋賀県および熊本県で実施した.滋賀県の霊仙セクションでは,層状チャートの露頭スケッチと写真撮影,チャートの肉眼観察と記載,試料採取を行った.未固結時変形の比較対象も必要と考え,熊本県天草地域で白亜系の露頭観察と写真撮影も行った.チャート試料は,層理面に垂直方向に切断・研磨した.肉眼および顕微鏡下で,写真撮影とスケッチ,記載を行った.一部の試料についてはフッ酸処理を行い,腐食面の観察を開始した. 霊仙セクションのチャートは珪質頁岩薄層をほとんど含まず,ほぼ塊状・無層理である.チャートの多くは暗灰色で,研磨面には灰色,明灰色,黒色部のほか,赤色化した部分も認められた.未~半固結変形と思われる構造が多数見出された.変形には液状化した珪質堆積物の注入やそれに伴う角礫化,チャート薄層の分断がみられた.チャート角礫のサイズは数cm~0.5 mm.チャート角礫を含む基質状部はやや泥質・暗灰色で,不均質である.チャート角礫と基質状部の境界は明瞭である場合と漸移する場合がある.このような産状は,異なる年代の珪質堆積物の混合の可能性を示す.またフッ酸腐食面の観察により,N. optima帯の基質状部にA. triangularis が,分断された薄層にはFollicucullus sp.が含まれることを確認した. 層序的下位の未固結~半固結珪質堆積物がなんらかの原因で移動し,上位層に混入した.そのため,放散虫個体または角礫化した珪質堆積物が上位層と混合して,異なる年代を示す放散虫の混在を招いたとする仮説が提案可能である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況は順調である.チャートの研磨面には予想以上に多くの変形構造が発見できた.フッ酸によるエッチング面の観察では,古い年代の化石が礫状部に含まれていることが確認できた.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にしたがって,推進する方針である. 今後は事例を蓄積するため,他地域での調査も視野に入れて研究を進める.霊仙セクションのチャートは,徹底的に観察するとともに,フッ酸エッチングの数を増やす.古い化石が礫状部から産出していることを示す典型的な写真を撮影したい. 変形場や珪質堆積物の物性をふまえた変形機構の観点からの検討も必要と考えている.
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Causes of Carryover |
設備備品費用として計上していた顕微鏡用デジタルカメラシステムを購入しなかった.研究分担者の研究室の備品を使用し,研究をすすめた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
岩石研磨片の観察は,研究分担者と議論をしながらすすめるのが効率的と考えた.またフッ酸エッチングのためドラフト装置が必要で,九州大学での設備を使用させていただく.このため,旅費として使用する計画である.
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