2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13904
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小松 一生 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50541942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町田 真一 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 研究員 (30554373)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高圧 / 高電圧 / 氷 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、昨年度に引き続き高圧かつ高電圧における中性子回折実験のセル構成の開発およびオーストラリアの中性子実験施設ANSTOにおける高圧・高電圧下中性子回折実験を行った。昨年の時点では、最大3 kV/mmの電場が上限であったが、今年度のセル構成の開発により、6.2 GPa, 10.2 kV/mmまでの中性子回折実験に実際に成功した。これは10 kV/mm超では世界初の高圧下・高電圧下中性子回折実験である。残念ながら本研究の目的である高圧氷VII相の高電場下での相転移は確認できなかったものの、高圧・高電場下中性子回折実験の技術は本研究期間内に確立することができたため、今後他の物質への応用を進めていく予定である。 また、高電圧下における物質の双極子モーメントの配向を調べるために、パリ―エジンバラプレスとインピーダンスアナライザーを組み合わせた高圧下誘電装置を開発した。本装置は、Review of Scientific Instruments誌に掲載済みであるが、さらに論文投稿時には7 GPa程度だった圧力上限を現在15 GPa程度にまで引き上げることに成功しており、同圧力までの高圧氷VII相の誘電率測定に成功した。 今年度は、さらに低温高圧下における誘電率測定の技術開発も行った。パリーエジンバラプレスで培ったノウハウをもとに、これを低温高圧条件を発生できる装置(通称「Mito system」)に導入することで、5 GPa, 80-300 Kまでの圧力温度範囲における誘電率測定が可能になった。 氷VII相の高圧・高電場中性子実験および誘電率測定については論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の計画時点では、高圧かつ高電圧を試料に印加するのは、技術的にも安全的観点からも大変な困難が予想されており、極めて挑戦的な研究テーマであった。しかし、圧力を封じるガスケット材として従来の金属ではなく、絶縁耐力の高いセラミックを用い、さらにそのセラミックがガスケットとして働く条件(焼成温度・焼成時間など)を地道に探査することで、実際に6.2 GPa, 10.2 kV/mmまでの高圧下・高電圧下中性子開発実験を成功させることができた。当初の計画では、この技術を用いて氷VII相の高電場下での相転移を確認することが目的であった。残念ながら、期待していた相転移は起こらなかったものの、これは失敗ではなく一つの成果であり、氷高圧相の理解には貢献できたと考えている。また、当初の計画にはなかった、低温高圧下での誘電率測定の開発にも成功しており、研究対象を氷VII相のみならず、様々な物質に応用可能になったことは当初の計画以上の成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
高圧下・高電圧下での中性子回折実験、および低温高圧下での誘電率測定が可能になったことにより、氷VII相のみならず、ほとんど全ての氷多形、さらには氷に限らず様々な物質が、今後の研究対象となる。氷の場合は、水分子の双極子モーメントが大きく、わずかな水分子の配向で全体の外部電場を打ち消してしまうため、中性子回折実験で確認できるほどには、配向する分子の割合が少なかったことが、氷VII相の相転移が確認できなかった主な原因と考えられる。今後は、双極子モーメントの小さな分子をターゲットとすることで、電場誘起相転移が有意に見られるような物質を探査していきたい。 低温高圧下誘電率測定の応用例としては、たとえば氷VI相の低温下での相転移の探査などが挙げられる。 高圧下・高電圧下中性子回折も低温高圧下誘電率測定も、いずれも全く新しい研究手法であるため、今後様々な展開が期待できる。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Bulk moduli and equations of state of ice VII and ice VIII2017
Author(s)
Klotz, S., Komatsu, K., Kagi, H., Kunc, K., Sano-Furukawa, A., Machida, S. and Hattori, T
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Journal Title
Physical Review B
Volume: 95
Pages: 174111
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Three impossible things before lunch - the task of a sample environment specialist2017
Author(s)
Booth, N Davidson, G Imperia, P Lee, S Stuart, B Thomas, P Komatsu, K Yamane, R Prescott, SW Maynard-Casely, HE
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Journal Title
Journal of Neutron Research
Volume: 19
Pages: 49-56
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Development of nano-polycrystalline diamond anvil cells for neutron diffraction experiments under high-pressure2017
Author(s)
Komatsu, K., Klotz, S., Nakano, S., Machida, S., Hattori, T., Sano-Furukawa, A., and Irifune T.
Organizer
日本地球惑星科学連合 連合退会2017年大会
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