2016 Fiscal Year Research-status Report
電子線ホログラフィーによるナノスケール隕石磁気学の提唱
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16K13909
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 勇気 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (50449542)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 透過電子顕微鏡 / 隕石 / 宇宙塵 / 残留磁化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、残留磁化から温度や磁場などの生成環境を紐解く岩石磁気学的手法を隕石中のナノメートルサイズの粒子に適用し、電子線ホログラフィーを用いて、従来の隕石のバルク分析では隠れていた、構成粒子個々の残留磁化の可視化から生成環境を解読できることを示すことを目的としている。これに対し、今年度は以下に示す実験シーケンスの確立から始めた。隕石を乳鉢で粉砕し、エタノールで超音波分散する。ここで、代表者の実験室に既設の動的光散乱装置を用いて、分散後の粒子分布を測定する。透過電子顕微鏡(TEM)観察に適したサイズ分布になるように分散時間を徐々に延ばしながら測定を繰り返す。その後に、マイクロピペットを用いてTEM観察用のグリッド上に滴下することで試料を準備する。このグリッドを通常のTEMに導入してしまうと、試料固有の磁場情報が失われてしまうことから、光学顕微鏡などで試料の準備状態を確認する。電子線ホログラフィー専用のTEMに特別に用意されている磁場フリーのローレンツホルダーの観察位置に試料を導入し、適した試料を選別した後に残留磁化を観察する。 隕石中に含まれる数ミクロンのマグネタイト粒子を集束イオンビームで加工して薄片とした後に、split-illumination electron holography法を適用して、数ミクロンに渡って残留磁化を可視化することに成功した。その結果、生成メカニズムの一端を解明できた。現在、本成果は論文としてまとめられ、投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定していた残留磁化の観察までにとどまらず、すでに論文を1編投稿するところまで進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は、その場観察による残留磁化の熱消磁実験を行う。H28年度までに用意した試料に対して、段階的に昇温してホログラフィー像を記録していく。キュリー温度は飽和磁場をかけてもスピンの向きがそろわなくなる温度であり、低温で熱緩和されるスピンが出てくる。加熱実験を行うことで、保磁力が決定でき、スピンの緩和時間の温度依存性が分かる。磁鉄鉱が隕石中で水質変成によって生成した時の温度を見積もる。得られた成果を論文としてまとめ、公表する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた実験シーケンスの確率が想定以上に順調に進み、さらに磁鉄鉱粒子の残留磁化の観察で想定を超える結果を得たため、一部の試料を後回しにして論文執筆作業に移行したために、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に残している、他の鉱物に関する残留磁化の観察のための実験シーケンスの確立を進めることで、使用する計画である。
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Research Products
(1 results)