2016 Fiscal Year Research-status Report
電気推進プラズマエンジンのための可変ピッチヘリカルアンテナの研究
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16K13920
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
竹野 裕正 神戸大学, 工学研究科, 教授 (90216929)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ロケット / プラズマ推進 / ヘリカルアンテナ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に沿った進展を阻害する事態が生じ,当初計画からずれる点も多いが,目標は変わっていない. 本研究の主眼となる可変ピッチヘリカルアンテナの製作では,要となる材料である蛇腹状金属ストラップの入手に問題が生じたため,その進行が遅れている.設計を含めた部品調達により,全体を自作することとした.一方,可変ピッチヘリカルアンテナでの実験が滑らかに進むよう,従来型アンテナを使用した実験を実施し,知見の充実を図った. プラズマ点火の観点では,昨年度から実施しているガスのパルス入射を変化条件として,点火・維持に関する基本条件を調べた(電気関係学会関西連合大会で発表).また,生成したプラズマの径方向分布を測定したところ,周辺に局在する分布が見出された.パルス入射の変化条件に対する依存性を調べることが必要である.また,中心軸に対する非対称性も確認され,アンテナ構造の対称性についても留意する必要が示唆された. イオン加熱に関しては,測定信号の評価手法の見直しと,数値計算による真空容器内のガスの拡散の知見を総合して,加熱条件下で加熱を示唆する高速イオンの存在を見出した(プラズマ・核融合学会で発表).高速イオンの存在に対応する信号が,想定以上のエネルギーまで延びていることから,測定手法のいっそうの検討も必要と考えられる. 予想外の事態や機器トラブルに見舞われながらも,当初目的に向かって計画を進展させている.今後も種々の工夫で問題を克服し,予定通り次年度で目標達成を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅延が生じた最大の原因は,提案アンテナを製作する中心部品である,蛇腹状金属ストラップを入手できなかったためである.本研究の着想段階で,国内企業が蛇腹状金属ストラップを製作している情報は得ていた.しかし,軸長可変機構の製作依頼業者と当該情報 をあたったところ,既にその製造は停止されていた.この研究では,この構造が構想を実現する要である.結局,研究代表者で設計し,金属加工業者から元となる部品の供給を受け,自ら蛇腹状金属ストラップを加工することとした.そのための部品設計などに時間を要したため,研究計画が遅れることとなった. その他,実験の中心となる既設装置において,油回転真空ポンプが故障するトラブルにも見舞われた.駆動電動機の焼損が疑われ,代替ポンプの導入を余儀なくされた.これは,対応に要した時間は長くないが,研究予算の大幅な使途予定変更を通じて,研究計画の遅延に影響することとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
トラブル等で遅延はしているものの,向う方向は当初と変わっていない.遅れに応じて実施内容を研究の本質に絞り,計画を進展させる. 主たる実験内容を,可変ピッチヘリカルアンテナによるプラズマ生成と励起波動計測に絞る.当初,小電力による準備実験の結果を受けての大電力実験を計画していたが,可能な限り早く大電力高周波増幅器を導入して,電力レベルについてはつぎめなく実験するこ とで時間の効率化を図る.高周波用整合器についても,研究室内の既設の他実験設備のものを流用することにより,予算を節約し,時間を短縮する.ガス導入の条件は,初年度にある程度広く知見を得たので,これを元にすることにより,実験の効率化を図る. 波動計測に関しても,初年度に電子密度の径方向分布についての知見を得ている.生成プラズマの分布は,高周波電界分布に強く依存するので,電子密度分布の知見は波動計測のための有用な参考情報となる.計測のための高周波磁気プローブについては,研究代表者は従来からその技術を持っており,(当初計画通りであるが)ラングミュアプローブの駆動機構を利用して導入する.
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Causes of Carryover |
計画遅延の理由に記した様に,油回転真空ポンプの故障で,代替機を購入したために,研究費全体の使途の再検討を要することとなった.実際には,ターボ分子真空ポンプの老朽化の方が著しく,今後の研究遂行で最も懸念される.万一これが故障して,代替機の導入が必要な場合には,次年度の予算のみでの研究遂行は極めて厳しいと予想される.そのため,最悪の状況を想定して,本年度の予算執行をできるだけ節約して繰越制度を利用する予算執行計画に変更した.このため,次年度使用額が生じることとなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
老朽化の著しいターボ分子真空ポンプが,研究計画中に故障する可能性は十分ある.万一故障した場合は,繰越予算を次年度交付予算に合わせて代替機を導入し,研究の遂行を図る.故障が起こらなかった場合には,遅延している計画を加速できるよう,実験の時間効率を向上できる機器の購入に充てる.
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