2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13923
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
伊藤 公孝 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (50176327)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 突発現象 / 亜臨界不安定性 / 多スケール乱流相互作用 / トリガー問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画の目的は、太陽フレアの発生や閉じ込めプラズマのディスラプション等、宇宙や実験室で観測される「磁化プラズマの突発現象」の物理モデルを構築する事である。変動が突発的に発生するトリガー過程を研究の眼目として捉え、突発現象における成長率の急速な増大の理論を構成する。亜臨界不安定性に着目し、マルチスケール乱流物理学によって非線形不安定性の種を研究し、線形理論では安定な系が突然不安定化される仮説を提示する。実験によって「突発現象」の機構を探査する為の物理的描像を提示する事を目標とする。 この考え方のもと研究を進め、多くの成果を上げた。もっともシンプルな非線形励起としてパラメトリック励起過程がある。非線形励起としてパラメトリック励起過程に着目し、GAM(測地線音波)の突発的発生を例として解析した。その結果、実際に観測されたような状況で発生する事を定量的に説明した。また、非線形シミュレーションを行い、速度空間非線形不安定性について、実験との定量的比較を行い定量的な一致を示す結果を得た。さらに、解析対象を広げた。LHD装置における高速イオン励起バーストが知られている。この現象に対し、(線形不安定モードではなく)非線形励起機構によって起きるという物理的描像から解析を進めた。その結果、tongue状励起である事を確認した。磁気流体的揺動か準静電的揺動であるかを判定する方法を理論的に導き、それを実験結果に適用した。その結果トリガー現象において観測されている揺動が準静電的非線形揺動である事を示した。さらに、中国HL-2AトカマクにおけるELM励起のデータを解析した。ELM励起をトリガーする非線形励起機構を発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
LHD装置における高速イオン励起バーストやHL-2AトカマクにおけるELM励起のデータを解析した。これらの現象に対し、線形モードが線形不安定によって成長するのではなく、非線形励起機構によって起きるという実験的検証を得た。いずれも、従来知られていなかったプラズマの突発的な変動を捉えることに成功したものであり、世界初の成果である。線形不安定性ではなく、非線形励起を探索すべきであるとの本計画の指導原理で導かれた成果であり、予想以上に進展したと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には研究計画を発足させ研究方針をつくりあげた。トリガー現象を精緻に観測し研究協力者と共にトリガー現象が非線形励起現象である実験的証拠を得た。トカマクのELMs (Edge Localized Modes)と呼ばれる突発現象のトリガー問題にも研究の端緒を開いた。平成29年度には、トカマクのELMs始め、改善閉じ込めのバースト現象にも対象を広げ集中的に取り組む予定である。そのためにHL-2A(中国)、ASDEX-U(ドイツ)、JFT-2M(日本)などのトカマクやLHD(日本)の観測データに対し、本研究によって開拓された解析手法を当てはめ、国内・国際共同解析研究を推進する。具体的な国際研究活動としては、独逸マックスプランクプラズマ物理学研究所、中国SWIP等の研究者を我が国に招聘する等の交流を行い解析を進める。非線形励起の理論モデルの解析も進める。これらの成果を国内外の学会等で発表する。成果を論文として出版する。
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