2017 Fiscal Year Research-status Report
深紫外表面プラズモン共鳴による逆光電子分光の信号増強
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16K13924
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉田 弘幸 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (00283664)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 逆光電子分光法 / 表面プラズモン共鳴 / 有機半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は逆光電子分光法の信号強度を金属の表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて増強することを目指している。2016年度には、真空蒸着法で作製した銀ナノ粒子についてLEIPSを測定し、検出波長350 nmで5倍の増強度を得た。これを踏まえて行った2017年度の主な研究成果は以下の通りである。 (1)増強度について定量的なデータを得ることで、信号増強がSPRによるものであることを確認した。まず、積分球を用いてナノ粒子の光吸収と反射を測定し、SPRによる消光スペクトルを求めた。一方、測定波長を260 nm~525 nmの範囲の7波長でLEIPSを測定し、信号強度の波長依存性を求めた。これらがよく一致することから、LEIPSの信号増強がSPRによるものであることを確かめた。 (2)銀ナノ粒子のSPRを用いて有機半導体のLEIPS強度の増強に成功した。本研究の最終目標は、有機半導体や表面に吸着した有機分子、生体関連物質などの高感度LEIPS測定である。このようなことから、銀ナノ粒子に典型的な有機半導体である銅フタロシアニンを吸着させ、LEIPS信号強度の増強を試みた。この結果、検出波長434 nmで5倍の増強を観測した。銀ナノ粒子の場合と同様に、消光スペクトルとLEIPS信号強度の波長依存性が一致することから、この信号増強がSPRによるものであることを確認した。さらに、銅フタロシアニン層の厚さを変えながら増強度を測定し、SPR伝搬距離を10 nmと求めた。 これらの結果は、SPRにより有機半導体などの逆光電子分光の信号強度の増強が可能であることを示す初めての実験データである。また、SPRによるLEIPS信号強度増強の研究手法を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で、目的としていたSPRによる有機半導体のLEIPS信号強度の増強に初めて成功したことは大きな成果である。また、LEIPS信号強度の波長依存性や膜厚依存性を定量的に測定することが可能になり、SPR増強メカニズムなどの詳細な議論が可能になってきた。これにより、本研究の手法も確立したといえる。今後、この研究手法を発展させていくことで、当初の目標達成が見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であることを鑑み、下記の課題を集中的に進める。 (1)金属ナノ粒子の粒形を揃えるなどの工夫により、より鋭いSPR共鳴を得ることで、さらに高い増強度を目指す。 (2)LEIPSでよく用いる200 nm~300 nmの深紫外での増強を試みる。このためには、アルミニウムなどの銀以外の金属を用いる。ナノ粒子の形成が難しければ、回折格子を使った伝搬型プラズモンによる信号強度増強なども検討する。
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Causes of Carryover |
2017年度は、真空着法で作製した銀ナノ粒子の表面プラズモン共鳴(SPR)で予想外の優れた結果が出たため、予定を若干変更し、世界で初めてのSPRによる逆光電子分光信号増強法を確立することに専念した。この銀ナノ粒子は、既存の設備で作製できたため、次年度使用額が生じた。 2018年度は、当初の予定通り深紫外域にSPRをもつアルミニウムの研究を中心に進めていく。アルミニウムでは、通常の真空蒸着法ではナノ粒子が作製できないことが知られている。このため、新たなナノ粒子作製法や回折格子の利用など、既存の設備では行えない試行錯誤を進めていく予定である。
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Remarks |
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Research Products
(6 results)